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著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2008080004 内田康夫 死者の木霊 1980 日本 講談社文庫

評者:発起人    評価:6  読了日:2008/08/13  公開日:2008/08/14

バラバラ殺人事件を追う刑事の執念 −内田康夫のデビュー作

 長野県・飯田市郊外にある松川ダム上流で男のバラバラ死体が発見された。通報を受けた飯田署の竹村岩男巡査部長(30)は張り切って捜査にあたる。俳句を趣味とし、思索型の竹村はこのような事件の捜査にあたることを願っていたのだ。

 普通死体がバラバラにされるのは小説では遺体の身元を隠すためである。ところが東京・練馬署へ戸沢という男から、ある男に依頼されて死体を(そうとは知らずに)飯田まで運んだのではないかという通報があった。この線を捜査した竹村や東京・室町署の岡部警部補たちは五代通商という商社の管理人室で惨劇の証拠を発見、失踪した管理人夫婦を全国指名手配する。被害者は管理人の叔父で総会屋をやっていた男だということも判明する。

 そして、長野県・戸隠の人里離れた場所で指名手配された管理人夫婦の縊死体が発見される。明らかに心中である。事件はすべて解決したかに思われた。しかし竹村にはどうしても納得できないところがあった。

 捜査本部が解散されても竹村は執拗に納得できる解決を求めて「捜査」を続けるのである。竹村は飯田、東京、青森、戸隠、三重県・鳥羽、軽井沢と妻・陽子の「へそくり」を使って、途中で謹慎処分を受けながらも捜査を続ける。捜査の途中であらたな犠牲者も出る。

 そしてすべての断片が揃い、全貌があきらかになる。犯人の周到な計画が暴露される。

 うう、しかし、動機が弱い、圧倒的に弱い!無差別殺傷ならともかく、いくら何でもこんなことぐらいで人殺しするか?死体がバラバラに切り刻まれたことに関する説明も弱い。また真犯人への協力者たちもこんなことぐらいで殺人の共犯になるか?

 1980年に内田康夫(うちだ・やすお、1934-)が栄光出版社というところから出したこのデビュー作、「朝日新聞」が取り上げて注目されるようになったらしい。私が読んだこの講談社文庫版(1983)には「大型本格社会派のデビュー作。」とあるが、本格?社会派?どっちでもないんじゃないの?

 読者は推理だけでは真犯人には到達できない、竹村刑事の捜査もはっきり言って「見込み捜査」と紙一重である。また(私が想像したように)戦争の傷跡だとか薬害事件だとかの社会問題が背景にあるというわけでもない。

 むしろ竹村や妻の陽子、室町署の岡部警部補などのキャラが安定感を与えていて、作者が描いた事件の構図を読者はあまり深く考えないでも追っていけるように作られている。まさに2時間ドラマにピッタリの気軽に読める作品である。

 この作品なかりせば、浅見光彦も世に出なかったかもしれないという意味でちょっと甘いが評価は6点!


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