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感想文番号 |
著者 | 書名 | 刊行年 | 刊行国 | 出版社 |
| 2008050005 | モーリス・ルブラン | 水晶の栓 | 1912 | フランス | ハヤカワ・ミステリ文庫 |
評者:発起人 評価:4 読了日:2008/05/29 公開日:2008/05/31
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強敵のため苦杯をなめるルパン −部下への死刑執行が迫る |
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モーリス・ルブラン(1864-1941)が生み出した怪盗アルセーヌ・ルパンもの、当サイトでは『バーネット探偵社』(堀口大學訳、新潮文庫、1928)、『奇岩城』(堀口大學訳、新潮文庫、1909)に続く3冊目であり、平岡敦(ひらおか・あつし、1955-)による新訳である。 だから当然ルパンは自分のことを「わし」と言ったりはしない。部下たちもルパンのことを「親分」と呼んだりはしない。 変装の名人というよりもう別キャラに変身してしまっているといっていいほどのルパンだから、自分のことは「おれ」と言ったり「わたし」と言ったり使い分けるのである。もちろんこれは翻訳上の問題である。部下たちも「ボス」と呼んで見たり、「あなた」と読んでみたり事情・状況にあわせているのである。もちろんこれも翻訳上の問題である。 さて、今回のルパンの敵は代議士のドーブレックである。この政治上は平凡な男は巨万の富と力を得ている。なぜか?運河建設をめぐる汚職事件(パナマ運河事件をモデルにしているらしい)に関与した「二十七人リスト」を保有しているからである。つまり政官界を脅迫し、悪事を働いているのだ。 ルパンはドーブレックの別荘に侵入して美術品などを盗み出すが、入念な下調べにもかかわらず召使いが別荘に残っていた。そして部下のひとりが召使いを射殺してしまう。 「わかってるだろう、おれは血を見るのが大嫌いだ。殺すくらいなら、殺されるほうがましなんだ。」と言うルパンである。しかし警察が別荘を取り囲む。ルパンは部下2人に必ず助けると言い残しゆうゆうと包囲網を突破する。 しかし逮捕された部下、ヴォシュレーとジルベールは死刑判決を受ける。なにしろアルセーヌ・ルパンの手下なのである。 彼らを救出するには「二十七人リスト」を入手し、政界や警察を動かすしかない。そしてドーブレックがリストを中に隠しているという、一度はルパンが手に入れたがすぐに奪い返された「水晶の栓」をめぐる攻防が繰り広げられるのである。 警察の局長であるプラヴィル、謎の女クラリス・メルジーなどが「水晶の栓」をめぐって互いに対立・協調しながらドーブレックと戦うのである。しかしルパンは今回は圧倒的に不利である。何度も屈辱的な敗北を噛み締める。 さてルパンは死刑判決を受けた部下を断頭台から救い出せるのか?「水晶の栓」の行方は?クラリスの正体は?謎はさらに謎を呼び、死刑執行の時間は刻一刻と迫る。 ルパンはどのようにしてこの窮地を脱するのか。 変身の名手であり、超人的な行動力、天才的な頭脳を持ち、手下や庶民に慕われるカリスマ、そして権力や極悪人を憎み、大胆不敵な方法で勝利をおさめる。そんなルパンが好きなのに、今回のルパンは少々鈍いようである。劣勢の期間も長い。しかも解決は暴力に頼る部分が大きい。 これはひょっとして「わし」とか「おれ」など呼び方の問題ではなく、この小説がやはりこれだけのものだったということなのだろうか。今でもフランス語圏でこの小説は読まれているのだろうか。日本でルパンと言えば「ルパン三世」のほうがはるかに有名になって久しいのである。 |