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著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2008040008 機本伸司 神様のパズル 2002 日本 ハルキ文庫

評者:発起人    評価:8  読了日:2008/04/28  公開日:2008/04/28

「宇宙の作り方」に挑む天才女子学生と落ちこぼれの「僕」 −三池崇史監督映画化

 宇宙はどうやってできたのか?よくわからないがビッグ・バンというものがあって「無」からできたという。それではその前はどうなっていたのか?どうすれば「無」から今のような宇宙が作れたのか?現に今宇宙があるのだから、また作れるのか?

 私のような暇人がよく考えそうなことである。第三回小松左京賞を受賞してデビューした機本伸司(きもと・しんじ、1956-)もこの小説の中で橋詰という老人を登場させている。彼はこの「神様のパズル」の答えを知らないでは死んでも死にきれないというのである。

 語り手の「僕」(綿貫基一)は私立K大理学部4年生だが特に何かぬきんでたところがあるわけではない。金がないのでバイトはしなければならない。卒業単位が足りない。あこがれている保積さんには相手にされない。就職活動もうまくいかない。卒論も書かなければならない。

 保積さんも入った鳩村教授(女性)の素粒子物理研究室のゼミでは、同級生だが天才物理学者でもある穂瑞沙羅華(ほみず・さらか)のめんどうを見るように教授から直々に頼まれる。穂瑞は飛び級しているのでまだ十六歳、彼女の基礎理論によって「重ヒッグス粒子」発見を目的とした”むげん”という大規模加速器がK大学も関わって稼動しようとしている。しかし世間から無責任な毀誉褒貶を受けて、穂瑞は周囲とコミュニケーションをとろうとしないのである。

 穂瑞と「僕」はゼミのディベートで「宇宙は作れるか」でYesの側に立つ。Noの側には保積さん、(女性関係で)要領のよさそうな佐倉、新興宗教にハマっているらしい須藤、院生の相理。このディベートで現代物理学の要点が説明される仕掛けである。しかしそれでもよくわからないことが多いので、何か別の入門書を読んでいたほうがいいかもしれない。(たとえば、リサ・ランドール『ワープする宇宙 5次元空間の謎を解く』(日本放送出版協会、2005)。こっちのほうが分量も価格も大きいが・・・。)

 さて、穂瑞は自ら打ち立てた「光子場仮説」により”むげん”を使って実際に宇宙を作ろうとする?実現すれば”むげん”どころか今の宇宙は崩壊する?

 しかし、この小説は現代物理学解説のための本ではない。あくまでも物理学は背景である。むしろこういうことを考えざるをえない人間というものを「僕」の目を通してエンターテインメントとして描こうとした作品であり、孤独な少女と「僕」や仲間たちの共感を描いているのである。読後感はベタベタせずさわやかである。

 6月7日から全国ロードショー公開される同名の映画(エグゼクティブ・プロデューサー:角川春樹、監督:三池崇史、脚本:NAKA雅MURA、出演:市原隼人、谷村美月、松本莉緒、田中幸太朗、岩尾望、黄川田雅也、石田ゆり子など)では当然のことながらエンターテインメント度とビジュアル度がアップされ、設定も変更されているようだ。


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