感想文番号

著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2008040007 ジャネット・リー・ケアリー あの空をおぼえてる 2002 アメリカ ポプラ文庫

評者:発起人    評価:7  読了日:2008/04/24  公開日:2008/04/25

家族喪失からの回復を描く −竹野内豊・水野美紀主演で映画化

  ぼく(ウィル)は十一歳、妹のウェニー(七歳)とトラックに轢かれて死んだ。でもぼくはパパとママを悲しませたくなかったのであの空を飛んでいったウェニーから離れて自分の体に戻ってきた。

 でもひどい怪我だった。ぼくはウェニーに向かって手紙を書くことにした。入院→退院→リハビリとぼくの身体は治ってゆくが、ぼくの心、そして深刻に傷ついたパパとママは後悔にさいなまれ、やり場のない怒りをぶつけあい、家庭は壊れていく。ウェニーの死・不在が幸せだった家を別のものに変えてしまった。

 でもぼくは毎日の出来事と思い出をウェニーあてに書くことで、また自分の行動で立ち直っていく。自分だけではなくママ、パパそしてもうすぐ生まれてくる赤ちゃんのために過去の思い出は大切にしながらも、しだいに家族も癒されていく。

 いたずら好きで可愛くてでたらめで誰からも好かれたウェニーについて語るぼくの手紙によってどんなに家族の受けた打撃が大きいものであったかがわかる。理不尽である。あのときこうしていれば、ああしていればウェニーは死ななくてすんだのではないか。もう二度とウェニーの作るでたらめ歌も聞けないのである。

 このあたり、同様の体験をした人には特に響くだろうと思う。またウェニーの人物造詣(いたずら好きの天使という感じ)は99%の人にその死をぼくやパパ・ママと共感して感動させるだろう。

 私が不満なのは、この本で描かれている喪失感からの立ち直りがあまりにも(心理学の?)「マニュアルどおり」のように思えることである。ぼくの「臨死体験」について作者が既知の科学的事実のように受け入れていることも私としては違和感を持つ。

 ゆっくり悲しんでゆっくり癒される、そんな暇も条件もない人たちのことも考えてもらいたいと私は思うのである。私の期待が大きすぎるのかもしれない。物語にそんなこと期待しても仕方がないのである。各人が自分の「ウェニーへの手紙」を書いていくこと、語っていくこと、生き続けることしかないのである。

 この本は「感動」や「共感」という心地よい感情を与えてくれる上質のエンターテインメントなのである。

 映画は明日4月26日から全国公開される。


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