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著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2008040004 廣瀬陽子 強権と不安の超大国・ロシア 旧ソ連諸国から見た「光と影」 2008 日本 光文社新書

評者:発起人    評価:8  読了日:2008/04/14  公開日:2008/04/15

イデオロギー・偏見から自由なロシア・旧ソ連諸国の現状報告

  ロシア・旧ソ連というとどうしても色眼鏡で見てしまいがちである。第二次世界大戦末期のソ連軍の「満州」侵攻、日本人捕虜の長期抑留、そして北方領土問題の存在。国内外での民主主義破壊と全体主義的政治体制、自由の剥奪と政治犯の捏造・虐殺・・・しかしいっぽうで曲がりなりにも「社会主義」を唱え米国と対抗した超大国でもあった。

 しかし、著者の廣瀬陽子(ひろせ・ようこ、1972-)・東京外大大学院準教授はそうした日本人の陥りがちな偏見や思い入れから自由である。ロシアをそして旧ソ連を構成しその後独立した国や地域、特に著者の専門であるコーカサス地域(黒海とカスピ海に挟まれたあたりですね)の研究や現地での危ない体験(この部分は迫力満点)から現在のロシア・旧ソ連諸国の複雑な現状を描き出す。

 総じて言えば、ソ連解体後、ロシアは旧ソ連諸国をなんとか勢力圏につなぎとめるためあらゆる手を打ってきた。強大な軍事力、エネルギー・資源での優位、そしてKGBから受け継がれてきた(断定はできないとはいえ)謀略・暗殺などの汚い手段、多角的な外交などを駆使してバラバラになるかと思われた旧ソ連諸国はEU入りしたバルト三国や反ロ的なウクライナ、グルジアなどをのぞいては影響力を保持し続けている。この点でプーチン大統領は私は好きではないが凄腕であると言える。

 他方で市場経済の導入は貧富の差を拡大し、ソ連時代に達成していた格段に安い物価、年金・長い休暇・短い労働時間(あまり働かないということでもありますが)、基本的に無料の教育費・医療費などは崩壊した。金持ちの子弟の家庭教師の地位を得るために「現役教師」の肩書きを持つほうが有利だという理由のみで教師は学校で教える。多くの庶民がソ連時代を懐かしむという状況が存在している。

 また悪名高いKGB的体質はロシア・旧ソ連のあらゆるところに今でも存在しているのであり、ソ連解体後も監視・盗聴・謀略は続けられているらしい。(プーチン大統領もKGB出身である。)

 意外に日本の人気はいろいろな面で高いようである。村上春樹の小説や日本料理、日本製品は多くの人たちに愛されているようだ。

 世界、そして日本がどのように今でも過去のKGB的体質を色濃く残し、軍事大国であり、資源価格の高騰にも助けられ経済力もつけているロシア・旧ソ連諸国と付き合うかという提言も著者の具体的な行動を含めて盛り込まれている。

 アメリカや中国、EUやイスラム圏が複雑に絡み合う紛争・駆引きは日本ではほとんど報道されないが続いているのであり、この地域からは目が離せないのである。私は目を離すかもしれないが、メディア、外務省などは著者のようにちゃんと仕事をしてわかりやすく説明してもらいたいと思う。まあ私などが知ったからといってどうなるものでもありませんが・・・。


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