感想文番号

著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2008030007 井川香四郎 冬の蝶 梟与力吟味帳 2006 日本 講談社文庫

評者:発起人    評価:4  読了日:2008/03/29  公開日:2008/03/30

悪と戦う正義派与力たち−NHK連続ドラマ「オトコマエ!」原作

  4月12日(土)午後7時30分からNHKで12週連続放映予定のドラマ「オトコマエ!」(福士誠治、 斎藤工、片岡鶴太郎、柴田恭平、井上和香、浅田美代子、藤村俊二など出演)の原作である。(ただし小説の主人公たちはドラマではずっと若く設定されている。)

  著者の井川香四郎(いかわ・こうしろう、1957-)はすべて文庫オリジナルで50冊ほど出しているが、この名前でのデビューは『飛蝶幻殺剣』(廣済堂文庫、2003)、それ以前には柴山隆司(しばやま・りゅうじ)名で『露の五郎兵衛』(新風舎、1998)という単行本を一冊出版している。新風舎といえば、慈悲、いや自費出版大手だったが、トラブル続出で今年1月には破産したことで記憶に新しい。

 さて、本書には「第一話 仰げば尊し」、「第二話 泥に咲く花」、「第三話 幻の女」、「第四話 冬の蝶」が収められている。

 時は天保年間、梟与力と呼ばれる北町奉行所吟味方与力・藤堂逸馬が寺社奉行吟味物調役支配取次役・武田信三郎、奥右筆仕置係・毛利源之丞八助たちの力を借りて権力犯罪を暴き断罪していく。現代風に言えば高級官僚・政治家たちと犯罪組織、医師・製薬業界、マルチ金融詐欺を行う宗教法人などとの癒着や計画倒産などが小気味良く暴かれていくのである。

 三人は「仙人」と呼ばれる宮宅(みやけ)又兵衛が主宰する寺小屋『一風堂』でともに学んだ同窓生である。「仙人」は北町奉行・遠山左衛門丞(金四郎ですね)や暴政に反抗した大塩平八郎などともつながりがあるらしく、峻厳な法の支配で腐敗体制を守ろうとする南町奉行・鳥居耀蔵と対立関係にある。

 しかし四話ともプロットが都合がよく出来すぎている。勧善懲悪的に、「庶民の味方」的に事件は解決される。さらに小説なのだから別にいいのだが、三人の言わば正義派中堅キャリア官僚たちが今の日本よりも柔軟に動き回り役所の壁を越えて協力していくというのは・・・?

 このシリーズは『日照り草』(2007)→『忍冬』(2008)に続いている。


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