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感想文番号 |
著者 | 書名 | 刊行年 | 刊行国 | 出版社 |
| 2008030001 | 花村萬月 | 眠り猫 | 1990 | 日本 | 徳間文庫 |
評者:発起人 評価:7 読了日:2008/03/02 公開日:2008/03/03
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すさまじい暴力が読者を魅了する花村萬月の第2作 |
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元警視庁刑事の仁賀(にが)丈太はその風貌から「(眠り)猫」と呼ばれている。元ヤクザの長田(おさだ)のすすめで二人とも探偵をしているが、ろくな仕事にありついているようには見えない。 この二人の魅力にひかれていく村上冴子は新劇女優だがあっさり劇団をやめて行動を共にする。猫の息子でまだ十八歳の「タケ」もいっしょである。長田が追っていた(巻き込まれた)事件は日本海側のT市を舞台にした暴力団同士の抗争を背景にすさまじい暴力の世界に登場人物たちを、そして読者を引き込んでいく。 徹底的な苦痛と恐怖を与えて口を割らせて真相に近づく。これは猫側も敵も同じである。そして冴子は猫、長田、タケや敵側の男にも引かれるのである。下品で暴力的、あるいはシンナーやシャブを消費し使う男たちを母性的(=性愛的?)感情で見守り協力するのである。 文体は荒い。視点が定まらないのは意識的にではない。しかし冴子がひかれていったような原始的、直截的でさっぱりした世界がそこには存在している。 暴力賛美だとかいう批判は的外れである。ただしこういう描写はいやだ、弱いという人は手を出さないほうがいいかもしれない。「危険性を十分に認識した上でお読みください。」という感じか。 この徳間文庫版の解説で北上次郎が書いているように(新潮文庫版は見ていない)、花村作品は血縁でつながらない「家族」(=擬似家族)を描いているのである。作品の中に理想の家族を創り出す、あるいは再建しようとしているのである。これが花村作品をただの「ハードサスペンス」と分けているポイントのひとつであり、泣かせどころである。 本書『眠り猫』(1990)は『ゴッド・ブレイス物語』(1990)に続く著者の第2作である。私にとっては芥川賞受賞作『ゲルマニウムの夜 王国記 T』(1998)以来ほぼ5年ぶりの花村作品である。 |