感想文番号

著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2008020004 佐藤多佳子 一瞬の風になれ 2006 日本 講談社

評者:発起人    評価:8  読了日:2008/02/16  公開日:2008/02/17

あくまでもさわやか純粋な運動部青春小説−フジテレビ系ドラマ化

  ひたむきである。秋空のようにさわやかで澄んでいる。風のように躍動感のある文章である。

 「俺」(神谷新二)が神奈川県春野台高校陸上部でスプリンターとして、そして人間として成長していく物語である。言葉使いは現代風でありもちろんケータイやメールもするのだが、あくまでも理想の高校生像からはずれず、ひたすらゴールに向かって、勝利に向かって、友情を固めて「俺」は走り続けるのである。ハードな練習に耐え、どうしたら勝てるのかを考え、教わり、後輩を教えるのである。

 小さいときからの友達で同じ高校の陸上部に入った天才的スプリンター「連」(一ノ瀬連)などの仲間たち、他校のライバルたち、顧問の三橋先生(みっちゃん、♂)、父さん、母さん、「俺」に影響を与えたこれも「天才的」サッカー選手の兄・健二(健ちゃん)そして「恋愛禁止」の陸上部で「俺」がしだいにひかれていく谷口若菜などまわりの大切な人々からすべてプラスのエネルギーを得て「俺」はどんどんはやく、千の、いや一瞬の風になっていく。

 最初のほうでは複雑な家庭環境を持ち、練習嫌いの「連」などがこの小説に陰影を与えるかと思っていたら、いつの間にかそのような影は消え、最後のインターハイ予選南関東大会のクライマックスへとひたすら駆け抜けるのである。

 私=発起人が気づいたのはこの小説の登場人物たちに向けられる作者の母性的と言っていいまなざしである。無限に優しいのであるが、同時に登場人物たちはいつまでも子どもなのであり、反抗は許されないのである。ましてや母以外の女性は「俺」の場合純情で口下手の谷口とのメールや数少ない会話までが許容範囲であり、「連」の恋愛も「強制終了」させられてしまう。

 また、「連」や「健ちゃん」などのキャラは「〜王子」への熱狂と共通するような気もする。

 私がなんと言おうと、佐藤多佳子(1962-)はこの小説で2007年度本屋大賞第1位となり第28回吉川英治文学新人賞を受賞、第一部から第三部までで100万部以上売った。ラジオドラマ化(NHK-FM)、漫画化(安田剛士)に続いて2月25日〜28日にかけては4夜連続でフジテレビからドラマ化放映されるのである(出演:内博貴、福田沙紀、長谷川純など)。

 さて続編は書かれるのか?


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