|
感想文番号 |
著者 | 書名 | 刊行年 | 刊行国 | 出版社 |
| 2008010005 | リサ・ランドール | ワープする宇宙 5次元空間の謎を解く | 2005 | アメリカ | 日本放送出版協会 |
評者:発起人 評価:9 読了日:2008/01/19 公開日:2008/01/19
|
物理学の最先端理論を提唱者自身がわかりやすく面白く解説 |
|
物理学?それどころか理科の授業の滑車のあたりでわけがわからなくなってしまった私が挑戦するにはあまりにも無謀なテーマの本であるように思われた。 しかし、著者のリサ・ランドールは親切丁寧に私のような読者にも直感的な理解ができるようにさまざまな工夫をこらしてとにかくこの600ページを超える本を読み通させてくれた。全部わかったとは言わない、しかし今物理学の最先端の現場では何が起きているのか、何がわかろうとしているのか、そしてそれが非常にエクサイティングな、今までの人類の物質や宇宙、次元に関する知識の多くを書き換えるものであろうことはよくわかった。 私たちが普段認識しているのは前後左右上下の方向を持つ3次元の世界である。これに時間という軸を考えると4次元であり、まあここまではわかる。しかし、4次元時空のほかにさらに次元があるという考え方はなかなか直感的には理解しにくい。いやパラレルワールドだとか時間旅行などのSFの世界でおなじみの仕組みがかえって理解の邪魔をするようになっている気もする。 ましてや著者が1999年にラマン・サンドラムと共同で発表した「ワープした余剰次元」という理論を、そしてその後の展開を数学無しに説明するというのは非常に根気の要る仕事である。したがって読者にもある程度の根気は求められる。 著者はどんな人にでも一から理解できるように基本の基本から説明を始めるのである。(私の経験から言うとアメリカの教科書類はほんとうに初歩の初歩から説明を飛ばさずに書かれているものである。) 空間とは?次元とは?ニュートンの理論は?そして二十世紀の初頭に大変革をもたらしたアインシュタインの特殊相対性理論、一般相対性理論とは?このあたりまでは滑車で物理学にまで到達できなかった私もいろいろな啓蒙書である程度おなじみである。(理解しているとは言わない) ところが、アインシュタインから「量子力学」、「標準モデル」、「階層性問題」、「ひも理論」、「超対称性」、「ブレーン」、「M理論」、「ブレーンワールド」となってくると名前すら聞いたことのない理論も出てくる。 でもさすがである。各章に掲げられている著者が創作した「不思議の国のアリス」風の物語や巧みなたとえ、図表、そして各章末の「まとめ」などによってだんだん読者もわかったような気になってくるのである。 著者が提唱している新しい理論については本書の最後のほうに出てくるが、これを説明するにはとくに二十世紀以降の物理学の進展と未解決の問題を概観する必要があったのだ。その意味で本書は物理学史としても出色のできばえだと思う。 著者はハーバード、プリンストン、MITの三大学の物理学部で終身教授職を持つ女性物理学者である。 CERN(欧州合同原子核機構)で2007年末稼動開始予定(ってもう動き出しているのだろうか?)の大型ハロゲン加速器(LHC)なる装置によって著者の理論は検証可能だそうであるが、朗報を待ちたい。 「宇宙の秘密が明かされようとしている。少なくとも私は、それが待ちきれない。」 なお本書は向山信治(東京大学ビッグバン宇宙国際研究センター助教)監訳、塩原通緒訳、2007年6月発行。 |