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感想文番号 |
著者 |
書名 |
刊行年 | 刊行国 | 出版社 |
| 2008010001 | 京極夏彦 | 前巷説百物語(さきのこうせつひゃくものがたり) | 2007 | 日本 | 角川書店 |
評者:発起人 評価:10 読了日:2008/01/02 公開日:2008/01/02
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若き日の理想主義者・又一の仕掛と苦悩を描くシリーズ第4弾! |
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『巷説百物語』(1999)、『続巷説百物語』(2001)、『後巷説百物語』(2003)に続くシリーズ第4弾の本書は時間的には第一作の前にさかのぼるという設定である。このシリーズの主人公とも言える又一の若き日の仕掛が描かれる。 若き又一は「青臭い」理想主義者である。人命を何より大切にする。しかしこの憂き世、もっと大きな仕掛(体制)によって差別され、分断され、貧困と苦悩に沈み、憎みあわされる人々が常に「損」をしている。又一がこうした人々の「損」を埋めるために考え出す仕掛はやがてこの大きな仕組を利用している「敵」と対峙せざるをえない。「稲荷坂の祇右衛門」である。この男は固有名詞ではあるが同時に普通名詞でもある。人々に損を甘受させる仕組そのものである。(『続』所収の「孤者異(こわい)」でよみがえる。) とは言ってもいったい又一って誰よ?と言う人には何のことかわからないだろう。つまりシリーズを最初から読んでいないと面白さは十分には味わえないところはある。 とはいえ、本書で又一が組む連中は他の三作とは異なる。 損料屋(=主に寝具や衣装、小物などを貸す商売)ゑんま屋の女主人・お甲/手代の角助/「長耳の仲蔵」/「削掛の林蔵」/「下谷に住まう久瀬棠庵(くぜ・とうあん)という儒学者くずれの本草学者」/元公儀鳥見役の山崎寅之助、そして又一が上方にいたときに関わりがあった「一文字屋仁蔵」、すべて身分制度からはずれた無宿人である。 仕掛に正統性・客観性を持たせるために「使われる」のは人の良い「南町奉行所定町廻り同心、志方兵吾」である。 「寝肥(ねぶとり)」、「周防大蟆(すおうのおおがま)」、「二口女(ふたくちおんな)」、「かみなり」、「山地乳(やまちち)」そして「旧鼠(きゅうそ)」と読み進むうちに又一たちと「敵」との戦いは熾烈さを増し、又一は自らの「青臭さ」の限界を知ることになる。多くの命が奪われる。 最後に又一は「御行奉為(おんぎょうしたてまつる)」が決めゼリフの御行又一になるのである。あの「おぎん」の出自の詳細も明らかになる。 さて次は京極夏彦によると又一たちの上方での活躍を描いた作品になるということだが、本書でやっと二十五話のこの巷説百物語シリーズ、どこまでいくのか、すでにその質においては仕掛人シリーズなどをはるかに凌駕した高みに達していると思われる。 |