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感想文番号 |
著者 | 書名 | 刊行年 | 刊行国 | 出版社 |
| 2007110005 | 笠井潔 | サマー・アポカリプス | 1981 | 日本 | 創元推理文庫 |
評者:発起人 評価:8 読了日:2007/11/25 公開日:2007/11/25
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カタリ派と黙示録の連続殺人事件−現象学的直感で推理する矢吹駆シリーズ第2作 |
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とにかく推理小説とかミステリーとか言われる小説にもいろいろある。その中に人気という点では東野圭吾や宮部みゆきなどの足元にも及ばないとは言え、哲学的な議論や歴史的な博識を味付けに使った一連の小説群がある。 笠井潔(かさい・きよし、1948-)が『バイバイ、エンジェル』(1979)に続いて世に出した本作もそうである。 前作の事件の傷も充分に癒えない「わたし」(=ナディア・モガール)は暑熱のパリ・セーヌ河岸で謎めいた日本人青年矢吹駆(カケル)といたところを何者かに銃撃される。カケルが盾のようになって庇ってくれたおかげで事なきを得たが、この事件が導入部のようになって新しい連続殺人事件に巻き込まれてゆく。 南仏ラングドック地方はかつて中世最大の異端だったカタリ派の本拠地だった。夏休みでパリを離れた二人はこの地方の富豪ロシュフォール家の一人娘ジゼールにカタリ派最後の抵抗拠点となったモンセギュールにある別邸に招かれるが、カタリ派の聖典(でもある)ヨハネ黙示録の見立て殺人が発生する。 第一の犠牲者はこのロシュフォール家別邸で、頭を石球で潰され、胸を矢で射抜かれて発見される。 第二の犠牲者は第一の事件の容疑者として警察に追われていたが、城壁都市カルカソンヌの密室状態の塔内で首吊り死体となって発見される。 ヨハネ黙示録をなぞるようにして続く第三、第四の殺人。はたして犯人は?一見不可能に見える殺人はどのようにして実行されたのか?カタリ派の秘宝のありかを示すといわれる古文書の行方、ナチス・ドイツと神秘主義思想のかかわり、ナチスと対決したシモーヌ・ヴェイユ(って有名な思想家ですね。読んでないけど・・・)、カケルの「思想闘争」等々、こちらの副筋や薀蓄が面白い。 笠井潔の場合、「革命」という観念の挫折を噛み締めながら推理小説というかたちでいったい何が間違っていたのかを自己批判・分析しようとしているらしいところが読み取れる。カケルにしても重要な登場人物である女教師シモーヌ・リュミエールにしても行動が自己処罰的である。 まあそのように鬱屈した人物たちだけでは暗くなるので、このシリーズのワトソン役である「わたし」はパリ警視庁警部の娘で大学生、しかも推理大好き、哲学や思想も日本の大学生よりは知識があるという設定になっている。(今やこんな大学生はすくなくとも日本にはいないだろうが・・・) もちろん推理小説としても、私が言うまでもなくしっかり作られていて、高いレベルの謎解きが楽しめる。 さて、謎が謎を呼ぶこのシリーズ、次は『薔薇の女』(1983)に続くらしいが、かなり腹(頭?)に力を入れて読む必要のあるので読むにしてもかなり間をあけてのことになると思う。(『バイバイ、エンジェル』を読んだのはもう4年以上も前のことである。) 蛇足だがアポカリプス=黙示録である。(この語源の薀蓄もこの小説に出てくる。) |