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感想文番号 |
著者 | 書名 | 刊行年 | 刊行国 | 出版社 |
| 2007080005 | 佐藤優 | 国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて | 2005 | 日本 | 新潮社 |
評者:発起人 評価:8 読了日:2007/08/26 公開日:2007/08/27
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拘留512日の元外務省「情報屋」の記録−「国益」と「国策」の狭間で |
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田中森一(たなか・もりかず、1943-)の『反転 闇社会の守護神と呼ばれて』(2007、幻冬舎)に続く「刑事被告人シリーズ」第2弾、とは言ってもメディアの世界では本書によって2005年にデビューした著者・佐藤優(さとう・まさる、1960-)のほうが先輩である。 著者は外務省に入省、英国大使館・ロシア大使館に勤務し、帰国後は「国際情報局分析第一課」に席を置いて特に「情報屋」の仕事をしていた。「国益」の観点から本書では詳しく語られていないがあまり表に出る仕事ではない。 その著者が一躍有名になったのは鈴木宗男自民党衆議院議員をターゲットにした(著者の言う)「国策捜査」に巻き込まれてからである。 2002年5月14日に逮捕され6月4日背任罪で起訴。さらに7月3日には偽計業務妨害罪の容疑で再逮捕、24日に起訴。2003年10月8日に保釈されるまで512日間拘留され、2005年2月17日東京地裁で懲役2年6ヶ月、執行猶予4年の判決を受けるが、著者は直ちに控訴している。(本書はちょうどこの東京地裁判決直後あたりに出版されている。) 本書では逮捕までのいきさつ、検察側の筋書きとは正反対の経過が詳細に語られる。2000年までにロシアと平和条約を締結して北方領土問題の解決を実現するという政府方針の実行のため、何よりもロシア側の情報収集・分析にいかに努力してきたか を著者は示そうとする。 しかし、残念なことに外交はすべてを公開して交渉するものではないという理由(外交機密)から著者は自分が裁判で不利になるかもしれない場合でも「国益」を最優先に考えるべきだとして、思わせぶりに匂わせるだけで終わっているところが多い。 逮捕後の取調べを担当したのは東京地検特捜部の西村尚芳検事で、この言わば密室での二人のやり取り・駆け引き・議論は小説のように面白い。著者によると西村検事はこれが「国策」捜査であることをはっきり認めている。 それでは「国策」とは何か?著者が何よりも大切だと考えている「国益」とどう違うのか?著者による「国策捜査」の分析は納得できるものだが、「国益」については中身がはっきりしないため、「国策」と「国益」における「国」とはいったい何かということを考えさせられる。 「国益」とは言っても実は狭い範囲の官僚や政治家、企業などの利益ではないのか?さまざまな立場から「私益」を「国益」と言っているだけではないのか?「国策」にしても同じである。そして民主国家であれば国民(社会)から遊離した国家機関のみが独占的に「国」を代表するような顔をすることは許されないし、日常的な監視が「下」から行われなければならないと私は現実無視と言われようが、思う。 さて、2030年に外務省から記録が公開される際に自分の主張が事実であることを、外務省が正しいことをしていたことを示すため(それだけではないだろうが)、著者はあえて長期拘留の道を選び、これを機会に読書や勉強に励んだのである。(220冊の本を読み、62冊の「思索ノート」を残したという。) 現在の日本の政治をワイドショーや週刊誌レベルの世論が動かすものだと軽蔑し、外交官や「情報屋」は「国益」を判断し秘密裏に行動する自由が与えられるべきだという主張が本書からは読み取れる。しかし、外務省、日本の外交は結果を見る限り対ロシアだけでなくたいした成果をあげていないように(週刊誌・ワイドショーレベルでは)思えるのだが、それは省内にいる著者のような優秀な人材が萎縮しているためなのだろうか? ところで、田中真紀子外相と外務省との対立や小泉首相による解任劇、外務省報償費(機密)問題、鈴木宗男議員の逮捕・起訴などいろいろあったのにほとんど忘れている自分に唖然とした。著者は、メモも取れない状況でも逮捕後も逮捕前もすべてを記憶に視覚的に焼き付ける方法を実践しているというのに・・・。これは見習いたいものである。 |