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感想文番号 |
著者 | 書名 | 刊行年 | 刊行国 | 出版社 |
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2007080001 |
ウィリアム・サマセット・モーム | サミング・アップ | 1938 | イギリス | 岩波文庫 |
評者:発起人 評価:5 読了日:2007/08/04 公開日:2007/08/05
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無難だが退屈、でも非凡な作家の片鱗を伝えるエッセイ
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作家は作品で表現する。しかし、作品だけでは表現できなかったこと、作品では切り捨てていることは活字化されたものの何倍・何十倍もあるに違いない。 イギリスの作家・劇作家ウィリアム・サマセット・モーム(1874-1965)が1938年に発表した本書もそれまで活字化されなかったもろもろを吐き出したかったのだろう。 「本書を書く目的の一つは、長いあいだ心に取り憑いて落ち着けなくなっていたいくつかの思いから、自分を解放することである。」 「裁判では、判事が事件を要約するとき(サミング・アップ)、陪審員の前に提示された事実を総括し、原告被告双方の主張にコメントを加える。・・・本書で私が試みたいと思うのは、自分の感情と思考をまとまった形で述べることに過ぎない。」 話題は多岐に及んでいる。自伝的な部分から演劇論、劇作論、文学論、小説執筆手法から哲学まで、納得したり感心する箇所は多い。おお、これは「使える」などと思う文章も多い。しかもモームがいかに膨大な本を読み、旅行で見聞を広げ、得意ではない社交にも加わったかもよくわかり、すべてこれ作品のためであると言われると、私などこんな雑文を書き散らかしているのが恥ずかしくなる。 しかし、この本の訳者・行方昭夫(なめかた・あきお、1931-)による「解説」や付録の「モーム略年譜」などを見ると、モームは本書で自身が同性愛者であったこと、イギリス諜報部の仕事をしていたことにほとんど触れていない。前者は示唆するにとどめ、後者は中身に触れられていない(ほかの作品に書いているのかどうかは不明。) まあ、それでもいいのであるが、このおもしろそうな二つのテーマを避けているこの作家の意見は、70年近く前の作品であることを差し引いて考えても、慎重で無難ではあるが迫力が感じられない。 もちろん『人間の絆』(1915)や『月と六ペンス』(1919)などで有名なこの作家をさらに知りたい、研究したいなどという人にはかかせない一冊。 日本ではモームの作品がかつてこの本を含め大学の英語の講義に使われ、受験問題に多数出題されたという事情があり、この本の対訳抄訳版も受験生の参考書として売れたそうである。 受験に使われるテキストがおもしろいはずがないのは当然か。 |