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感想文番号 |
著者 | 書名 | 刊行年 | 刊行国 | 出版社 |
| 2007060005 | 星新一 | 安全のカード | 1978 | 日本 | 新潮文庫 |
評者:発起人 評価:7 読了日:2007/06/09 公開日:2007/06/10
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天才・星新一が送るゼロサムゲーム社会の夢16編 |
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今年で没後10年を迎える星新一(ほし・しんいち、1926-1997)であるが、その作風から今読んでもそんなに古さを感じさせない。もちろんケータイが登場したりすることはないが、作者は慎重に地域性や固有性を排除してストーリーを組み立てている。ほとんどの場合登場人物には名前さえないのである。つまり読者にとって文化的な前提知識がいらないのである。 1978年に出版された本書でも16編すべてにこの原則は貫かれている。 とは言ってもまったくの白紙の上に組み立てられた物語などというものもありえない。主人公は多くの場合会社勤めの「青年」である。つまり戦後日本の企業社会(資本主義社会)が前提である。彼らは会社勤めに満足していない。会社勤めでない場合でも世の中から高く評価されているとはいえない。 しかしおおむね平凡な日常を送っているのである。そんな彼らのところに現れるのが「占い師」だったり、「友人の幽霊」だったり、「過去の人生」の一部を買いたいという男だったり、的確なアドバイスをしてくれる「謎の老人」なのである。信じられない能力を持つ「会員券」や「カード」を買ったりする場合もある。 いずれにしろ平凡なあるいは貧窮した人生から主人公たちは不思議な力で成功を手に入れるのである。欲望を喚起する道具を持って現われた「ドラえもん」である。 ところが、人生山あれば谷ありというか、ゼロサムゲームだというか、最後には成功のツケを払う羽目になってしまう。浦島太郎の物語のように、あるいは常に勝ち続ける賭博がないのと同じようにである。 この新潮文庫版(1987)では星新一本人が「あとがき」を書いている。その中で作者は「小説はわかりやすいが、解説はむずかしい」と自分の作品について述べている。「自分にも書けそうだと思っても、亜流はいまだに出ないのだ。」と強烈な自負を表明してもいる。でもそのとおりである。 なお、本書に収められた16編は、@「頭痛」、A「親友のたのみ」、B「過去の人生」、C「人員配置」、D「めぐまれた人生」、E「出勤」、F「会員になって」、G「幸運な占い師」、H「雷鳴」、I「安全のカード」、J「あの女」、K「ポケットのなかに」、L「業務命令」、M「問題の部屋」、N「メモ」、O「声が・・・・・」。 |