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著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2007060003 本谷有希子 腑抜けども、悲しみの愛を見せろ 2005 日本 講談社文庫

評者:発起人    評価:7   読了日:2007/06/04  公開日:2007/06/06

閉塞感漂う村に戻ってきた「女優」が恥と秘密をさらけ出す

 赤戸前(あかどまえ)という田舎の村が舞台である。見通しのいい十字路でダンプに轢かれて死んだ和合曾太郎・加津子夫妻の葬儀の日、四年前に女優になるため村を出て行った長女の澄香(すみか)が戻ってくる。

 澄香は派手なスーツ、化粧、ピンヒールといういかにも東京で女優をしているという格好をしているが、実は東京の劇団や事務所でうまくいかなかったらしい。しかし自分を「唯一無二」の存在だと信じ、暴力的に家族たちにもそれを確認させようとする。うまくいかないのは自分のせいではないのである。

 事故をまじかで目撃した次女の清深(きよみ)は高校生だが姉とは対照的に内にこもるタイプである。両親の事故死の原因となった飛び出した猫の飼い主に深夜執拗に脅迫電話をかけ続ける。澄香が東京へ出ていく前には姉を観察し、日記を盗み読み、それをネタに漫画を描き、村じゅうに恥をさらけ出してしまったこともある。清深は執拗に暴力的に澄香にいじめられる。

 長男だが後妻であった加津子の連れ子として和合家に入った宍道(しんじ)は澄香が自己のプライドを保つために誘惑し、関係を続ける。

 宍道と結婚したばかりの待子(まちこ)はコインロッカーに捨てられていた赤ん坊だった。もともと望みも低く、家庭や幸せという経験がないためか世間体のために結婚した宍道とはただ同じ屋根で暮らしているだけの関係である。宍道に疎まれ、ひとりでエジプトに新婚旅行(!)に行かされる。

 この和合家の四人はさまざまに絡み合いながら肉体的・精神的に傷つけあうのである。

 外界と途絶されたような閉塞感漂う寂れた村を背景に描かれた壊れた「家族」の秘密・恥が読者の前に次々と暴露される。そして最後に物語は急転回を遂げるのである。

 こんなことは私にはまったく関係ないし、意味も不明だと言うこともできるが、この作品に秘められた謎=秘密・恥が展開していく過程はなかなかドラマティックで、視覚的である。

 それもそのはず、作者の本谷有希子(もとや・ゆきこ、1979-)はもともと小劇場出身で自ら「劇団、本谷有希子」を主宰、女優・脚本家・演出家・小説家・ラジオのパーソナリティなどマルチに活躍している。この作品も自作戯曲を小説化したもので、三島由紀夫賞候補にもなった。

 2007年7月7日からは佐藤江梨子(澄香役)主演の映画化作品も公開されるという。


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