感想文番号

著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2007050004 奈須きのこ 空の境界 the Gardens of sinners 2004 日本 講談社ノベルス

評者:発起人    評価:3   読了日:2007/05/22  公開日:2007/05/24

どこが面白いのかわかりませんでした−閉ざされた平面妄想世界

 最初は2001年に自費出版されたそうである。作者の奈須きのこはほかにもゲームなどを作ったりしているらしいが男であるらしい。それがこの「講談社ノベルス」という大出版社の小説シリーズに登場したのが2004年。そして今年、この作品はアニメ映画化されるという。(ちなみにこの題名は「そらのきょうかい」ではなく「からのきょうかい」と読ませている。)

 いや、コミック、アニメ、ゲームなどいわゆるオタク系カルチャーを低く見ているというわけではない。ただあまり見たりしたりしないだけである。「萌え」とか言う感覚もよくわからない。戦闘美少女?コスプレ?メイド?これらもいずれも未体験である。当たり前だが。

 まああまり深みにはまらない程度に楽しんでくれ。麻生外務大臣などはこのあたりの文化に造詣が深く、世界に広めようなどとおっしゃっているそうでもあることだし、がんばってください。

 しかしである、そのような背景知識・体験無しの私がこの小説を読んで見るとぜんぜん面白くなかったのである。しかもやたらと長い。ノベルス版上下900ページもある!

 美少女・両儀式(りょうぎ・しき)は古くからの名家(何の名家かよくわからないが)で育ち、自分の中にもう一人の人格・識(しき、♂)を抱えていた。普段は式が識をコントロールしているが、識は完璧な殺人者の人格である。式自体も刃物の超人的な使い手でもある。

 着流しに赤いブルゾンなどを羽織って、ナイフや日本刀を持っているのである。

 式が高校に入学して出会ったのが式に比較するときわめてまっとうで、超人的能力もない黒桐幹也(こくとう・みきや)である。幹也は式にひかれる。式も言葉は乱暴だが悪からず思っているように見える。

 しかし式は深夜家を抜け出し街を徘徊する。そのころ連続通り魔事件が発生していたが、残虐に切り刻まれ、血を噴出させている死体の側に必ず式がいたのだ。凄絶なほどの美しさ(だそうで)ある。幹也はその現場を目撃する。・・・ところが式は事故に会い二年間も眠り続ける。

 目を覚ましたとき空白の二年間を除いて式は自分を取り戻すが、もう一人の人格=識は式から去っていた。幹也は二年間がまるでなかったかのように式に接する。幹也は大学に入学したがすぐに辞めて、魔術師・蒼鷺橙子(あおざき・とうこ)が経営する事務所に勤めている。

 回復した式はそして幹也はさまざまな怪事件(ほとんどは残虐な殺人事件である)に遭遇するが、その犯人たちは荒耶宗蓮(あらや・そうれん)という「根源の渦」を求める魔術師に操られているらしい。巫条霧絵、浅上藤乃等々、そして荒耶ともほとんど人間業ではない血まみれの戦いを繰り広げるのだ。(もちろん式と橙子がである。)

 幹也の妹で幹也を独占したい鮮花(あざか)などという人物も登場して、おいおいなんとかしてくれ、いつになったら終わるのかとじりじりしながら読み進め、やっと最後に(当たり前だが)式が思い出せなかった事故の前の記憶がよみがえる。しかもこれも壮絶な戦いを通じて・・・。

 だめだ。これはとても耐えられない!魔術だとか妖精だとか陰陽道とかそういうのはもういいよっ!斬り合いも殺人もその動機もほとんど意味不明である。

 閉ざされたゲーム空間のような世界で膨らんだ妄想はしかしながら平面的で叙述はくどい。

 はい、わかりました、もうこの種の本に手を出すのはしばらくよします。


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