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著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2007040008 山口雅也 13人目の探偵士 1993 日本 講談社文庫

評者:発起人    評価:7   読了日:2007/04/28  公開日:2007/04/29

技巧をつくした超豪華ミステリ幕の内弁当

 「・・・こちらの世界と似ているものの、鏡に多少の歪みがあるように、われわれが知っている英国とはいくぶん異なるところ」がある「パラレル英国」を舞台としたシリーズの一冊。

 最も違うところはこちらの世界にはフィクションの中だけの存在である「名探偵」たちが活躍をし、〈探偵士〉という称号を持ち、腐敗堕落した警察に先立って事件発生後72時間は捜査権を持つという権限が与えられていることである。

 折から探偵たちの聖典、『緋色の研究』が公にされて100周年の1987年、〈探偵士百年祭〉というイベントをひかえるロンドンでは探偵士ばかりが次々と殺される事件が発生する。犯人は猫(キャット)と名乗り、しかもマザー・グース似た数え歌通りの見立て殺人である。

 12人目の犠牲者は〈探偵士〉の頂点に立つ〈探偵皇〉、クリストファー・ブラウニング卿であった。卿は密室状態の自室で殺されていた。

 その密室で死体とともに発見されたのが「私」である。しかし「私」は記憶喪失で何も思い出せない。

 当然嫌疑がかかるが、「私」は三人の〈探偵士〉に事件解決を依頼する。密室殺人を得意とするヘンリー・ブル博士、米国出身のハードボイルド派マイク・D・バーロウ、女優・モデルの経験もある若手のベヴァリー・ルイス。しかし同時に三人に依頼したわけではない。

 ロール・プレイング・ゲームのように同じ事件を三人の探偵に依頼、探偵たちは別々のアプローチで事件解決に挑むのである。それでも最後にはどのルートを選んでも同じ解決編(いや発端というべきか)にたどり着く仕掛けになっている。

 とにかくミステリ・ファンにとってはひとつの文章もないがしろにできないパロディやトリビアがさりげなく(でもないか)ちりばめられていて、楽しい時間をすごせることは請け合い。ミステリのあらゆる要素が詰め込まれた超豪華幕の内弁当といった感じか。

 ミステリ・ファンでない人にとってもそのような薀蓄は抜きにしてまさにゲーム感覚で楽しめる作品になっている。

 もともとは「ゲーム本」として『13人目の名探偵』の名称で1987年に出版されたものを下敷きにしているようであり、本書出版後は実際にゲーム化もされているらしい。

 山口雅也(やまぐち・まさや、1954-)を読むのは『キッド・ピストルズの妄想』(1993、創元推理文庫)以来だが、おなじみスコットランドヤードのパンク刑事、キッド・ピストルズとピンク・B 《ベラドンナ》も大活躍。


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