|
感想文番号 |
著者 | 書名 | 刊行年 | 刊行国 | 出版社 |
| 2007040004 | トマス・ハリス | ハンニバル・ライジング | 2006 | アメリカ | 新潮文庫 |
評者:発起人 評価:4 読了日:2007/04/14 公開日:2007/04/14
|
ハンニバル・レクターはいかにして「怪物」となったか−ヘンな日本趣味にびっくり! |
|
絶対友達になりたくない、いやそれどころか関わり合いになりたくないタイプの天才的犯罪者にして犯罪学者、「怪物」ハンニバル・レクター博士が前作『ハンニバル』(1999、新潮文庫)から7年ぶりに戻ってきた! 関わり合いになりたくはないが、怖いもの見たさでこの残虐で狡猾、天才的な頭脳を持つ人物についてもっと知りたいと思うのが読者のあまり高尚とは言えない欲求である。 さて『ハンニバル』はその後どうなったのかと思って読み始めると、なんと物語は1941年のリトアニア、ハンニバルが8歳のときから始まる。ハンニバルはレクター城で父レクター伯爵や母、妹のミーシャなどと幸せにくらしていた。ハンニバルは幼児のときから天才的な頭脳の片鱗を見せていた。 しかしすべてを変えたのは戦争であった。この年ドイツはソ連に侵攻、レクター城はドイツ軍とリトアニアの”ヒヴィ”=ドイツへの自発的協力者たちに蹂躙された。一家は近くの森の中のロッジに避難して暮らしていたが、今度は反撃に転じたソ連軍が西に向かう。ロッジの前で水を求めたソ連軍戦車をドイツ軍機が攻撃、ハンニバルとミーシャを除いて家族や使用人たちは死んでしまう。 ”ヒヴィ”たちは今やソ連軍側あるいは赤十字を装っていた。ハンニバルとミーシャは彼らに監禁される。そしてハンニバルはその後の「怪物」を作り上げたと言っていい強烈な体験をこの連中に味わされる・・・。彼はあまりの衝撃でこのときの記憶を封印してしまうのである。 ハンニバルはフランスに住む叔父のロベール・レクターに引き取られるがいっぽうでロベールの妻・紫夫人(日本人)に惹かれ日本文化を学び、医学生として研鑽を積む。しかしリトアニアでの記憶がよみがえるとともに残虐な復讐を実行に移していくのである・・・。ハンニバルに殺されていく連中のほうがかわいそうになってくるほどである! さらにこの紫夫人という人物と作者の日本文化理解に多くの日本読者が強烈な違和感を持つことは間違いない。4月21日から作者が脚本を書いたという映画が公開されるようだが、紫夫人役を演じているのは日本人女優ではない。 作者のトマス・ハリス(1940-)にはぜひFBI捜査官クラリス・スターリングと逃亡した後のハンニバルを、2001年の同時多発テロ以降のハンニバルを描いて欲しいと思うのであるがあと何年待てばいいのか先が思いやられるのである。 |