感想文番号

著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2007030005 京極夏彦 続巷説百物語 2001 日本 角川文庫

評者:発起人    評価:9   読了日:2007/03/17  公開日:2007/03/17

いよいよ深みと奥行きを増すシリーズ第二弾!

 『巷説百物語』(1999)に続くシリーズ第二弾は前作よりいっそう深みを増し、前作ではおぼろげに示された登場人物たちの過去と因縁がより明確な姿をとって読者の前に開かれる。登場人物たちも増え、その驚くべき関係も明らかになってくる。

 このシリーズがひとつの世界を構築し始めたといえる。それは表世界に対する裏世界であり、江戸時代という身分制社会の破綻しつつある「論理」に差別され、苦しめられ、破壊された人々を解放する「仕掛け」をほどこす「小股くぐりの御行又市」、「山猫廻しのおぎん」、「事触れの治平」たち「小悪党」が活躍する世界である。

 この世界に巻き込まれ、いつの間にか又一たちに利用され、共感を覚え、時には積極的に彼らに協力するのが武家の出身ながら商家に養子に行き早々に隠居している山岡百介(ももすけ)である。百介の夢は諸国を巡り歩き不思議な話を収集し、いつか「百物語」を開板することだ。

 しかし、前作に比べスケールを拡大した又一たちの仕掛け、又一たちの属する世界の闇の濃さを実感した百介は最後には彼らとは別の道を行くこと、つまり表の世界で「戯作者」として生きていくことを決意する。

 妖怪をタイトルとした「野鉄砲(のでっぽう)」、「孤者異(こわい)」、「飛縁魔(ひのえんま)」、「船幽霊(ふなゆうれい)」、「死神 或いは七人みさき」、「老人火(ろうじんのひ)」の全六篇のそれぞれが独立していると同時に時間的には前後しながら「巷説百物語」というひとつの大きな作品となっている。

 中でも「死神 或いは七人みさき」は本書の圧巻であり、「老人火(ろうじんのひ)」はその後日談のような作品である。

 京極夏彦の筆はますます冴え、私・発起人は寝る前の(平均)三十分は完全にこの世界の住人になっていた。

 さてこのシリーズは直木賞受賞作『後巷説百物語』(2003、角川書店)に続くが、私・発起人は『ルー=ガルー 忌避すべき狼』(2001、徳間書店)に突入だ。


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