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感想文番号 |
著者 | 書名 | 刊行年 | 刊行国 | 出版社 |
| 2007030003 | 荻原浩 | 神様からひと言 | 2002 | 日本 | 光文社文庫 |
評者:発起人 評価:8 読了日:2007/03/09 公開日:2007/03/10
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辞表を叩きつけたい人にお奨めの快作 |
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サラリーマンをやっている人なら一度や二度は自ら辞表を叩きつけて、上司や経営の無能ぶりや不正行為を暴いてやりたいという気持ちになったことがあるだろう。しかし、普通はそのような気持ちをグッと押えて自分が「人質」として会社に差し出しているもののことを思い踏みとどまるのである。 荻原浩(おぎわら・ひろし、1956-)が2002年に発表した本書の主人公、佐倉凉平の場合は違う。大手広告代理店では上司を殴ってクビになり、「珠川(たまがわ)食品」に再就職したものの、そこで配属された販売促進課でも役員会議室で喧嘩し、「お客様相談室」に異動となった。 『お客様の声は、神様のひと言』という社是を掲げている珠川食品だが、創業者の玉川政次(まさじ)前会長が中堅食品会社まで育て上げ引退・行方不明になったあとは企業家精神を失い凋落気味である。 女婿の玉川和雄社長に力はなく、創業者の孫にあたる改革派気取りの玉川政彰副社長と創業者時代から残っている溝口専務が派閥争いをしている。 つまりお客様の苦情は増えるが、改善はされない、「お客様相談室」にとっては最悪の状態である。しかも電話をしてくる「神様」の中にはわざと瓶詰めらっきょに虫を入れたり、金品要求 目的の「その筋」の人たちも多いのである。 ここで凉平はさまざまな理由でこの「リストラ要員収容所」に配属された変人たちと知り合いお客様=「神様」たちへの対応を体で覚えていく。 いっぽう凉平はいっしょに住んでいた元バンド仲間のリンコが半年前に突然いなくなったという痛みをかかえている。真夜中の新宿中央公園でギブソンのアコースティック・ギターを弾いて歌う凉平の前に現れ るジョン・レノンに似た男のひと言は? 「お客様相談室」でのドタバタ調の部分と凉平の夢を象徴するリンコ捜しの部分がうまく重なって最後には読者に最高のカタルシスを感じさせる場面が用意されている。 凉平は二十代なのにちょっと目線がおじさんぽいような気もするが、辞表を出したくても出せない全国数千万人のサラリーマン(OL)たちに笑いと力を与える物語になっている。 |