|
感想文番号 |
著者 | 書名 | 刊行年 | 刊行国 | 出版社 |
| 2007020007 | アントニイ・バークリー | 第二の銃声 | 1930 | イギリス | 国書刊行会 |
評者:発起人 評価:8 読了日:2007/02/22 公開日:2007/02/24
|
殺人劇の筋書きどおりに本物の死体が!−バークリーの傑作 |
|
探偵小説作家、ジョン・ヒルヤードが所有するミントン・ディープス農園。ここに招かれた客たちはヒルヤードとその妻・エセルとともに余興で推理劇を演じることになった。近在の探偵小説作家たちが招かれ、推理をしてもらおうという趣向である。 この小説の語り手、シリル・ピンカートンも客のひとりとしてこの推理劇に参加する。劇のリハーサルや準備の記述を通じて、滞在客たちの人間関係が明らかになってくる。 どちらかというとからかわれやすいタイプの「私」、対照的にプレイボーイにして「スポーツマン」のエリック・スコット−ディヴィス、「現代風」でエリックの従妹であるアーモレル、フランス人のポール・ド・ラヴェルとその妻で元女優のシルヴィア、清純派のエルザ・ヴェリティーに主人夫妻をあわせた八人は複雑な愛憎・利害関係があるようだ。 三人の推理作家を前に演じられた劇で殺される役を割り振られたエリックはしかしほんとうに死体となってしまう。さて犯人は?動機は?二度聞こえた銃声の謎は? それとも不運な事故なのか?ピンカートンは旧友のロジャー・シェリンガム(他作品にも登場する名探偵)に解決を依頼するが・・・。 英国のアントニイ・バークリー(1893-1971)は本格探偵(推理)小説の「黄金時代」を代表する作家の一人である。 本格推理と言えば、(多くは)殺人事件をめぐって作家はフェアな手がかりを提示し、読者に知恵比べを挑む。読者は目を皿のようにしてテキストを読み、犯人とそして動機を推理する。当たっていれば大満足、はずれていても解決が合理的であれば潔く負けを認めて感心する。 しかし現実の殺人事件は探偵小説ではない。21世紀ともなれば警察や検察はDNA鑑定やら携帯電話の通話記録から最新技術を駆使して犯罪発覚後何があったかを再現するのである。(物証が見つからない場合、日本の警察などは自白を強要するようなこともあるようであるが、それは小説の上でも現実の上でも邪道である。) ここには論理の出る幕はないのである。 つまり黄金期の探偵小説は余暇をもてあました人に最適の知的ゲームだったのである。しかし作家のほうでもそうそう独創的なエンディングばかりは考えられない。さらに論理的に矛盾せず、フェアであるというルールを守っても、解決は何種類もありうる。 探偵小説というもの考え抜いたであろうバークリーがこの小説でやろうとした仕掛けにもすでに先例があるが、先例があるということを考慮に入れた上で探偵小説としての 完成度を保っているのはさすがである。 こたつにミカンでも、熱燗でものせてじっくり、邪魔されずに読みたい作品である。 なお本書は1994年に「世界探偵小説全集2」として国書刊行会から出版された初の完訳版である。(西崎憲訳) |