|
感想文番号 |
著者 | 書名 | 刊行年 | 刊行国 | 出版社 |
| 2007020006 | 真山仁 | ハゲタカ | 2004 | 日本 | 講談社文庫 |
評者:発起人 評価:9 読了日:2007/02/16 公開日:2007/02/22
|
不良債権処理と企業再生を描いた迫真の一冊−NHKでドラマ化 |
|
文学とビジネス・金儲けはあまりなじまないものとして考えられてきた。『金色夜叉』でも『ヴェニスの商人』でも金を追うやつは悪者である。文学者たるもの金などというものから超然としていなければならぬ、という観念は私・発起人をも縛り付けていたのである。 たしかに金にまつわる本ばかり読んでいては味気ないがバブル崩壊から不良債権処理、金融危機、企業破綻危機、そして企業統合の時代を私たちは生きてきたのである。 この島国に住む人々の多くに大きな影響を与えてきたこの危機の過程を正面から見据えて描いたのが元新聞記者の真山仁の力作『ハゲタカ』(2004)である。 題名のハゲタカとは主に日本人が外資系のファンドを嫌って呼ぶ言葉である。 1989年、主人公である鷲津政彦はニューヨークでジャズピアニストになる夢を追っていたが、バイアウト(企業買収)のプロ、「ケネス・クラリス・リバプール」(KKL)のアルバート・クラリスに見込まれて米国でこの仕事に入る。日本ではバブル経済絶頂期であった。 そして1997年、大手都市銀行・「三葉銀行」総合企画部内の不良債権処理チーム資産流動化開発室室長・芝野健夫は、同行の持つ不良債権を一括して売却処理する「バルクセール」の責任者として、「ホライゾン・キャピタル」代表取締役として日本に送り込まれた鷲津と対峙する。芝野はニューヨーク駐在経験も長く、企業再生のプロ、「ターンアラウンド ・マネージャー」の必要性を痛感していたが、政治家や反社会的勢力と癒着して発生した債権を隠したまま処理する上層部のやり方に不満を感じていた。 いっぽう、栃木県の名門リゾートホテル「ミカド」を経営する松平家の当主・重久の長女・貴子は重久の反対を押し切ってスイスの大学に留学、帰国後も「ミカド」に戻らずお台場の外資系ホテルで実績を上げていた。しかし、バブル崩壊と放漫経営で「ミカド」はどうにもならない状況になっていた。 「ハゲタカ」の鷲津、都市銀行の芝野、そして「不良債権」側の松平の三人は1997年から2004年まで、さまざまに絡み合う。この三人の「人間ドラマ」のほうはうんそうだねという水準なのだが、圧倒的なのはこの期間に多くの国民の目に触れることなく進行していた不良債権処理・企業破綻/再生・企業買収の細部描写である。 私が知る限り、この小説の中で特定の企業や個人がモデルではないと断言できない例はひとつもなかった。たとえば「三葉銀行」は「中京銀行」と合併し、「UTB銀行」となったし、鷲津たちが傘下におさめた第二地銀の名前は「東京相愛銀行」であり、再生のために買収した「ハニーコーン」などで有名な「太陽製菓」のオーナー一族は大林家である等々。「ホライゾン・キャピタル」 にしても「XXゾン・キャピタル」という会社が実在する。 結局日本企業や金融機関はこの世界のゲームのルールを知らなかったのである。またルールを自分で作る力もなかった。さらに日本政府は米国政府の意向に沿って破綻処理・再生路線を強引に後押ししたのである。 本書の最後には、鷲津の驚愕すべき過去=ハゲタカとなった動機が明らかになる。しかし本編は2004年で終わり、M&Aが花盛りとなるそれ以降は「to be continued」(続く)となっているのである。 うう、今アマゾンで注文した続編の『バイアウト』(2006、講談社)が届いた。こうしてはいられない、それではこの感想文も「to be continued」(続く)。 そうだ、この作品と続編を原作としたNHK土曜ドラマ「ハゲタカ」のほうはすでに17日に第一回が放送された。見てしまいました。鷲津には大森南朋、芝野は柴田恭兵、鷲津が破綻処理した老舗旅館「西野屋」の息子で鷲津のライバルとして現れる西野治に松田龍平、かつて鷲津が芝野の部下として三葉銀行丸の内支店で貸し渋りのため自殺した町工場の娘で現在はテレビ局記者となっている三島由香に栗山千明などの配役である。 鷲津−芝野の関係は原作とは違う。三島も西野も本には登場しない。逆に原作の松平貴子役はドラマでは登場しない。総じて固有名詞は最小限に抑えられている。 肺ガン手術から復帰した柴田恭兵が大森南朋と不良債権をガンにたとえて切り取らなければ死ぬ、しかし手術で死ぬこともあるという会話を繰り広げていたのが印象に残った・・・っていつの間にかテレビ番組感想文になっている。失礼。 ※ この感想文、19日に書いたがサーバー不調のため公開は22日となった。 |