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著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2007020001 京極夏彦 百器徒然袋−雨 1999 日本 講談社文庫

評者:発起人    評価:8   読了日:2007/02/02  公開日:2007/02/03

探偵・榎木津礼二郎とその「一味」が悪い奴らを退治する痛快活劇

 京極夏彦の 京極堂シリーズの準主人公的存在・榎木津礼二郎を主役とした三編を収録した作品集。

 榎木津の父は元子爵で政財界に大きな影響力を持っているらしく、本人は「これぞ美男子だ」という容貌。しかし行動と言動は奇妙奇天烈、探偵=自分=神だと公言し、「下僕」たちを罵倒する。

 他人の記憶が見えるという特殊能力を持っているため、依頼人や関係者と会っただけでほとんど真相が見えてしまう。しかし証拠や自白はそれだけでは当然得られない。

 神田神保町の持ちビルに「薔薇十字探偵社」を開き、秘書役の安和寅吉(和寅)、助手の益田龍一(元神奈川県警)を使っているが、「一味」の京極堂=中禅寺秋彦、警視庁刑事から麻布署に左遷降格された木場修太郎、売れない作家の関口巽、釣り堀主人の伊佐間一成、古物商の今川雅澄などとシナリオを「あ、うん」の呼吸で作り上げ、事件を解決、悪い奴らを退治していく。

 本書での語り手「僕」(電気配線の図面引き)は結局最後まで名前が確定しないが、「鳴釜(なりかま) 薔薇十字探偵の憂鬱」で依頼人としてこの探偵社を訪れる。姪の早苗が奉公先の御曹司と仲間たちに陵辱され、妊娠、女の子を出産した事件の相談に訪れたのだ。

 榎木津と「一味」たちの活躍で御曹司と悪友たち、その親たちも制裁を受けるのだが、ここではあの京極堂でさえドタバタ活劇の登場人物のようである。そしていつのまにか「僕」までが依頼人の役割を超えて「一味」たちの描くシナリオで役割をふられているのである。

「瓶長(かめおさ) 薔薇十字探偵の鬱憤」では赤坂の「壷屋敷」と呼ばれる家の秘密と陰謀が粉砕され、「山颪(やまおろし) 薔薇十字探偵の憤慨」では禅寺が経営する高級会員制料理「薬石茶寮」の秘密と犯罪が暴露される。

 「僕」はすっかりこの「一味」に入ってしまっている。この(シリーズ内)シリーズは『百器徒然袋−風』に続くらしい。


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