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著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2007010006 ドナルド・E・ウェストレイク 逃げだした秘宝 1983 アメリカ ミステリアス・プレス文庫

評者:発起人    評価:5   読了日:2007/01/28  公開日:2007/01/29

世界は不条理に満ちている−ドートマンダー・シリーズ第5作

 「本の虫クラブ」に2年3ヶ月ぶりに登場するドナルド・E・ウェストレイク(1933-)作品である。前回ご紹介した『ジミー・ザ・キッド』(1974、角川文庫)、さらに前々回ご紹介した『強盗プロフェッショナル』(1972、角川文庫)と同じくニューヨークの窃盗犯、ジョン・ドートマンダーを主人公とする作品の長編第5作である。

 今回ドートマンダーはそれとは知らず、<ビザンチンの炎>と呼ばれる九十カラットの最高級ルビーを盗み出してしまう。

 この名品はアメリカ合衆国から国連を経由してトルコに返還されることになっていた。ところがキプロス問題などでトルコと対立するギリシア系組織がこの逸品を強奪し、一時隠しておいたケチな宝石店へ忍び込んだのがドートマンダーだったのである。

 ニューヨーク市警、FBI、CIAなどもともとのドートマンダーの敵だけではなくギリシア系、トルコ系、それぞれの反政府勢力、アメリカに敵対する世界中の民族主義者やテロリスト、諜報機関がこの宝石と宝石を盗んだ犯人を捜しはじめる。

 それだけではない。普段はドートマンダーの仲間でありお互いに仕事をいっしょにしたり、助け合っている仲間たちもニューヨーク市警の徹底的な逮捕・拘束戦術に音を上げ、犯罪組織のボスたちもこのとんでもない犯人を突き止めようとするのである。

 途中で自分がとんでもない代物を盗み出したことを知ったドートマンダーは四面楚歌の中、どうやって生き延びるのか?

 さて、前回に引き続き、私・発起人がこの本から読み取ったビジネスマン(パーソン)のための教訓をまとめよう。

F 最新技術に習熟せよ!

 今回ドートマンダーは単独でこの宝石を盗み出した。仲間のアンディー・ケルプに話を持ちかけようとしたのだが、技術オタク気味のアンディーが留守番電話を入れたため技術を軽視する傾向にあるドートマンダーは一人で行動する道を選んだのである。もちろんこの作品が発表された1983年と今とでは技術レベルは違うが、常に新しい技術動向に目を配り、自分でも使ってみることが大切なのである。「いやワシにはケータイはわからん!」などといっていてはとんでもないチャンスを逃してしまうことにもなりかねないのである。

G 新聞・TVを見よ!

 見出しだけでも、あるいはニュースの最初の5分だけでもいい。世の中で自分の住んでいるところで何が起きているのか知っていないとドートマンダーのような目に逢うのである。朝会社に行ってみると会社が捜索を受けていたり、営業停止処分を受けていたり、社長が頭を下げて記者会見をやったりしていないとは限らないのである。

H 下っ端を相手にするな!

 最終的にドートマンダーが今回のピンチを脱したのは敵のトップとの交渉を通じてである。四方が敵だらけの場合、主敵の決定権を持つ相手と交渉するしか手はないのである。部下や騒ぐだけで何もしない「上司」を相手にしていては撤退戦でも効率が悪い。

 さてしかし、今回の教訓はどうも当たり前すぎるような気がする。それはこの作品のせいであろうか?私のビジネスマンとしての感覚の鈍磨のためであろうか?その両方のためであろうか?はたまたミステリーをビジネス書として読むという私の読み方に致命的な欠陥があるためであろうか?

 なお、本書は早川書房の「ミステリアス・プレス文庫」として出版されている。角川文庫の場合、著者名はウエストレイクと表記されているが本書や文春文庫ではウェストレイクとエがェになっている。どちらかといえばェのほうが原語の発音に近いような気がするが、まあこんな細かいことにこだわっていては大物にはなれんことはたしかだ!

 よって、I小事に拘るな!を最後の教訓としたい。 


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