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著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2007010003 松本清張 わるいやつら 1961 日本 新潮文庫

評者:発起人    評価:6   読了日:2007/01/13  公開日:2007/01/13

医師による「完全犯罪」とその露呈−TV朝日系ドラマ化

 松本清張(まつもと・せいちょう、1909-92)の作品にはとにかく多くの悪人が登場する。

 1961年に発表された本書『わるいやつら』では総合病院の院長・戸谷信一(とや・しんいち)もそのひとりであり、彼が計画し、実行する殺人が描かれる。

 亡父の信寛(のぶひろ)は高名な医者だったが、その後を継いだ信一(32)は医学にも病院経営にもほとんど興味が無かった。病院の院長であるという社会的地位を利用して、財産のある女たちと同時に関係し、金を貢がせることに執心するというとんでもないわるいやつである。

 しかも彼はこうした自分の行為に何ら良心の呵責を感じていない。あっけらかんとしているといってもいい。彼にとって女は色と欲の対象でしかないのである。赤字の病院経営もこうして得た金でなんとか埋めているが苦しい状況は変わらない。

 ところが銀座で洋装店を経営する槙村隆子(27)は彼が今まで利用してきた女たちとは、美貌も財産も教養も格が違った。彼はなんとか隆子をものにしようとするが相手は一筋縄ではいかない。気があるようなないような素振を見せて信一をじらすのである。

 知合いの弁護士・下見沢のアドバイスに従い、財産目当てと思われないように正式に結婚を申し込み、「見せ金」を作り、別居状態にある妻との正式離婚の手続きを進める。しかしとにかく金を作らなければならない。

 信一が篭絡している愛人たち、横武たつ子や藤島チセからは夫殺しを依頼されていた。彼は医者である。薬を処方するのも注射を打つのも、そして死亡診断書を書くのも彼の仕事であり、普通は疑われることなく区役所は埋葬許可書を発行する。「完全犯罪」である。

 信一は横武たつ子を、そして藤島チセの夫を殺し、財産を手に入れようとする。

 ところが、先代の妾で、信一とも関係を持ち、横武たつ子殺しを手伝った婦長の寺島トヨは槙村隆子への執心に嫉妬し、行動を監視し妨害しようとする。信一はトヨをも亡き者にしようと計画するが・・・。

 45年前以上とはいえ、信一の「完全犯罪」計画は抜け穴だらけである。後半部では信一の犯罪がしだいに露呈し、槙村隆子と結婚するどころではなくなってくる。警察も捜査も迫る。いわゆる犯人の側から見た倒叙小説の面白さ・サスペンスが後半部を盛り上げる。

 もちろん、題名にあるように「わるいやつ」は信一だけではなかったのである。

 さて、この作品は1月19日から朝日放送・TV朝日系で連続ドラマとして放映される。戸谷には上川隆也、寺島(名前や設定は変えているようだが)には米倉涼子、槙村は笛木優子、下見沢は北村一輝などのキャストだそうである。


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