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感想文番号 |
著者 | 書名 | 刊行年 | 刊行国 | 出版社 |
| 2006120005 | ヘルマン・ヘッセ | 湖畔のアトリエ | 1914 | ドイツ | 新潮文庫 |
評者:発起人 評価:9 読了日:2006/12/30 公開日:2006/12/31
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芸術は家庭の不和の中で育つ?−泣かせるピエール |
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芸術は長く人生は短くはかないのである。それでも芸術がある人はいいが、私のように芸術と無縁の衆生には短くはかない人生だけが残るのである。 ヨハン・フェラグートは画家である。しかもかなりの大家であるが、ロスハルデ(これが原題)という自ら所有する美しい土地で母屋とは別にアトリエを建て、そこで制作し寝泊りもしている。夫人のアデーレは母屋に住んでいる。二人の関係は冷えきっているのである。 次男のピエールも母屋に寝室を与えられているがこの夫婦間を自由に行き来する特権を持っている。このピエールは父母両方から愛されているが、自分はどちらからもほんとうは愛されていないように感じている。このピエール、思春期前の男の子の可愛さが遺憾なく描かれていて、すでに子どもが育ってしまったすべての親にああ、もう少しいっしょに遊んでやれば、お話をしてやれば(聞いてやれば)よかったと悔やませるのである。 長男のアルベルトはすでに父からは離れている。高等学校の寄宿舎住まいをしていて、夏休みにロスハルデに戻ってくるが、ヨハンを憎み(それはおそらくアデーレ夫人を大切にしないから)アデーレ夫人の味方なのである。 芸術に打ち込むフェラグート、世間と隔絶しただただピエールやアルベルトを頼りに引きこもって暮らしているアデーレ夫人。 そこへやってきたのがフェラグートの旧友で現在はインドで暮らすオットー・ブルクハルト。敏感な彼はフェラグート家がすでに崩壊していること、しかしフェラグートの苦しみを和らげ偉大な芸術を生み出させるためにはこの場所、そして家族を捨てさせるしか方法がないことを看て取る。彼はインドへとにかく行ってみることをこの友人に勧める。 フェラグートも同意するが、この計画を妻に話したときから彼をこの場所に引き止めていた唯一のくびきともいえる、ピエールが病で倒れる・・・。 ヘルマン・ヘッセ(1877-1962)が1914年に発表した長編としては第4作と比較的初期の作品であるが、偉大な芸術家が家庭の不和、子どもたちとの愛憎の中で苦悩している姿は作者の投影であるようだ。 |