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著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2006110002 京極夏彦 塗仏の宴 宴の支度 1998 日本 講談社文庫

評者:発起人    評価:9   読了日:2006/11/14  公開日:2006/11/17

伊豆山中の村人全員が消滅?皆殺しか?−忘れられた妖怪と怪しげな団体が続々登場

 京極夏彦(きょうごく・なつひこ、1963-)による京極堂シリーズの第6弾。

 今ではあまり知られていない妖怪の名前をタイトルにした六パートからなっている。「ぬっぺっぽう」、「うわん」、「ひょうすべ」、「わいら」、「しょうけら」、「おとろし」。それぞれの妖怪がどういうものなのかあるときは京極堂が語り、別のときはほかの登場人物たちが解説してくれる。

「ぬっぺっぽう」では、過去5作でも語り手を務めてきた売れない小説家、「私」=関口巽(せきぐち・たつみ)が、編集者の妹尾友典に伊豆の山中にあったはずの村が消滅したという事件をもとにした記事執筆を依頼される。十五年前(昭和十三年)の新聞にはそれを裏付けるような記事が残っているが続報はない。

 話を持ち込んだ元警官で消えた村に駐在していたという光保公平に話を聞き、実際に現地に行った関口が見たのは?怪しげな郷土史家、堂島静軒に導かれるようにして消えた村の中心にある旧佐伯家で、大量虐殺の痕跡とその肉を食べると不老不死になるという「くんほう様」=「ぬっぺっぽう」?

 記憶はとぎれ、「私」=関口は逮捕される!なぜ?

 次の「うわん」ではあの『狂骨の夢』(1995)に登場し今は沼津に住む朱美が自殺志願者、村上兵吉を助ける。だが村上はまた自殺を試みる。「成仙道」という新興宗教団体が街に溢れる。

「ひょうすべ」では元編集者の加藤麻美子と「みちの教え修身会」、「わいら」では占い師「華仙詁処女」(かせんこ・おとめ)を匿った京極堂の妹・中禅寺敦子と「韓流気道会」、「しょうけら」では今でいうストーカーに監視される三木春子と「長寿延命講」そして霊感少年「蘭童子」が、「おとろし」では『絡新婦の理』(1996)の織作茜と「徐福研究会」−。

 怪しげな団体が京極堂を取り巻くいつもの登場人物(警視庁刑事の木場修太郎、探偵・榎津礼二郎など)や過去の事件の主役級の登場人物と絡み合う。

 不吉な雰囲気が高まり、現実感覚が剥落していく。

 しかし次々と現れるこの怪しい団体は何だ?逮捕された関口の運命は?などと考え込んでいる暇もなく『塗仏の宴 宴の始末』(1998)にすでに突入しているのである!

 ますますこの京極堂世界は厚みを増し、読者は息つく暇もなく幻惑されたまま京極堂による憑き物落しを待つのである。


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