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感想文番号 |
著者 | 書名 | 刊行年 | 刊行国 | 出版社 |
| 2006100003 | 京極夏彦 | 嗤う伊右衛門 | 1997 | 日本 | 角川文庫 |
評者:発起人 評価:8 読了日:2006/10/15 公開日:2006/10/15
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闇と血を濃厚に描いた京極夏彦の「怪談」 |
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お化け屋敷などでは必ず登場する日本の怪談の女王とも言うべき「お岩様」。あまりに怖いので私などはテレビなどに登場すると途中でチャンネルを変えてしまう。つまり最後までほんとうのお岩様の物語を見たり読んだりしたことがない。 ただひたすら怖いというイメージだけがつきまとうお岩様伝説(もっとも有名なのは鶴屋南北の『東海道四谷怪談』(1825)か?)を稀代の妖怪フリークでもある京極夏彦(きょうごく・なつひこ、1963-)が新たな物語に仕立て直した本書は京極堂シリーズ第5弾『絡新婦の理』(1996)と第6弾『塗仏の宴 宴の支度』(1998)の間に発表された。 この作品を貫くイメージは漆黒の闇と度々流される生臭い血である。また代々受け継がれるべき家を維持するための血である。情念・愛憎は血の継承制度と衝突する。いや血の継承制度が怨みと流血を生み出すのか。 決して笑わない伊右衛門と最終的に対決するのは泥沼のようなニヒリズムを持つ人物として描かれる伊東喜兵衛。伊右衛門は伊東に屈して屈辱的な地位を与えられそれを甘受しているように見えたが、実は伊東のニヒリズムの根源を看破し、美醜を超えた存在としての民谷岩(提灯於岩)と「添い遂げる」ことによって「嗤う」のである。 京極堂シリーズのような言葉の奔流は抑えられているが、有名な怪談を単なる怪談のままにせず自由に変形を加えて、謎を合理的に解決していくという著者ならではの境地に達した傑作である。 なお、本作は蜷川幸雄監督、唐沢寿明・小雪主演で映画化(2003)され、漫画化もされている。第25回泉鏡花文学賞受賞作でもある。 |