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感想文番号 |
著者 | 書名 | 刊行年 | 刊行国 | 出版社 |
| 2006090003 | エド・マクベイン | われらがボス | 1973 | 日本 | ハヤカワ・ミステリ文庫 |
評者:発起人 評価:6 読了日:2006/09/19 公開日:2006/09/21
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荒廃するアメリカを描く87分署シリーズ第28作 |
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ほぼニューヨークを模したと思われる架空の都市、アイソラの87分署が取り組む事件を描いた有名シリーズの(おそらく)第28作。 私がこのシリーズのひとつ、『キングの身代金』(1959)を読んだのは2004年の7月19日。それから2年以上経ったがこの87分署シリーズは第55作(おそらく)の『最後の旋律』(2005)で幕を閉じた。作者のエド・マクベイン(1926-2005)が昨年亡くなったからである。 マクベインは第1作の『警官嫌い』(1956)から50年近くにわたって、アメリカの都市と犯罪、それと戦う警察官たちの姿を描いてきたのである。私が「現代の眼から見るとかなり牧歌的」と書いた『キングの身代金』から14年、『われらがボス』(1973)のアメリカはベトナム戦争の傷跡、人種間の抗争、「愚連隊」(と本書では訳されているが、まあギャング)の跋扈、ドラッグや「性革命」の浸透、そして犯罪の低年齢化、銃などの武器の普及とかなり荒廃の度合いを深めている。 一月六日の午前三時、電話工事のために口が開けられた溝の中で赤ん坊を含む六人の男女の全裸射殺死体が発見される。87分署のスティーヴ・キャレラ、バート・クリングを中心にして捜査が開始される。 ところがすぐに、一月十四日付けのランドール・M・ネズビットという男、「ヤンキー反乱隊」というギャングの会長の供述書が続く。87分署の捜査の展開とこのネズビットの調書が交互に挟み込まれ、しだいに読者は何が起きたのかを知ることになる。(途中でバート・クリングがおそらく前作で登場したのであろうオーガスタ・ブレアーという美女にプロポーズするシーンなどもある。) 謎解きの要素は少ない。受動的に物語の展開に身を任せるテレビドラマ的な楽しみ方はできる。そして何より人の命がささいな理由から奪われていった当時の米国社会がうまくとらえられている。 原題の"Hail to the chief"(大統領就任式で演奏される曲名でもある)のchiefは警官の位では無く、おそらくこの「愚連隊」(ギャング)の「会長」のことであり、「会長」の饒舌は当時のニクソン大統領(つまり最高司令官である。)の言動(ベトナム戦争やウォーターゲート事件)に重なる。こんな若造のチンピラの言うことが大統領そっくり?大統領がこの「会長」そっくり?深読みのしすぎではあるまい。 読んで気分のいい作品ではないが、70年代前半の雰囲気の一端がわかる。 |