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感想文番号 |
著者 | 書名 | 刊行年 | 刊行国 | 出版社 |
| 2006080001 | 石田衣良 | 下北サンデーズ | 2006 | 日本 | 幻冬舎 |
評者:発起人 評価:7 読了日:2006/08/01 公開日:2006/08/01
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小劇団のメッカ、下北沢で夢を追う者たちの物語−ソフト産業化された小説(文学)の極北か |
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下北沢などほとんど足を踏み入れたことの無い私でもそこに無数の小劇団が集中しているということぐらいは知っていた。 高校を卒業、理系の国立大生となり地方から出てきたばかりの里中ゆいかは前年の夏見た下北サンデーズの舞台に感激しこの売れない劇団の扉を叩く。もう十年以上もやっていながら下北沢でいちばん小さい劇場「ミニミニシアター」どまりの劇団である。 団員は座長で脚本・演出のあくたがわ翼、主演女優で座長と同棲しているらしい伊達千恵美、不細工役の馳背川「サンボ」現、身長185cmのキャンディ吉田(♀)、脚本も書く寺島玲子、実際にホストクラブでバイトをしているジョー大杉、典型的な二枚目で資産家を親に持つ八神誠一。八神をのぞいては全員がバイトをし、極貧生活を送っている。飲む場所も下北一安い酒場「ひまわり水産」だった。 しかしあくたがわはゆいかの素質を一目で見抜く。「・・・この子はルックスが天才的だ。」しかも純粋で頭が良くて芝居が大好きで明るくて人を憎むことを知らず、人一倍努力する。 そしてゆいかはまさにくすぶっていた「下北サンデーズ」の女神となったのだ!「サンデーズ」は、「ミニミニシアター」→「駅横劇場」→「ザ・マンパイ」→「松多劇場」と下北沢の劇場のヒエラルキーをのぼりつめて行く。 いっぽう団員たちにもそれぞれ連ドラやCMへの出演、脚本依頼が入り始める。中でもゆいかは「グラビアアイドル」として有名になり、大ベストセラー小説『そして、僕は愛を誓った』、略称「愛チカ」映画化の主演女優も決まる。 劇団に金が流れ込み始めた。今までは貧乏だったけどいろいろ軋轢はあったけどこの劇団を結びつけていた核、自分たちの芝居をするという楽しさが揺らぎ始める。 「愛チカ」制作発表の日はちょうど日本の小劇団の甲子園、「下北ヌーベル演劇祭」決勝戦とぶつかった。いったんは「愛チカ」を選ぶゆいかだったが、代役が「壊れてしまった」。さてゆいかはどうする? まあ、さらっと読めて落ち着くところに落ち着くという意味では安定感のある作品である。普通の読者の普通の期待を裏切らないのである。 すでにこの小説を原作にしたというテレビドラマが7月13日からテレビ朝日系で木曜日9時に放送されている(上戸彩が里中ゆいか役)。 私は見ていないが、小説のほうは雑誌「パピルス」3号(2005年12月)から7号(2006年8月)に連載され、つい先日この単行本が書店に並び始めたばかりである。 ここで疑惑が膨らむのである。 最初から芸能プロダクション、テレビ局、原作者、出版社(つまり幻冬舎)、広告会社、CMスポンサーやさまざまのプロデューサーたちが綿密に企画・打合せをし、「原作」もあるドラマとして作り上げたのではないか。青白い顔をしてときどきテレビのクイズ番組などに出ている作者の石田衣良(いしだ・いら、1960-)は頼りになる兄貴のイメージを演出しようとしているのかもしれないが、私には日本人のマイケル・ジャクソン崩れのようにしか見えないのである。 それはさておき、小説のビジネス化というかソフトコンテンツ化の真っ只中に自分はいるのに、小劇場の商業化を皮肉るような作品をよく書いたなと思うのである。 小説の中にC.C.R.の「雨を見たかい」や、「あしたのジョー」の「泪橋」や、ベイ・シティ・ローラーズの「サタデー・ナイト」が触れられていて、私には懐かしかったけど、若い読者にはどうだろうか。それとも実はもともと若い読者などターゲットにしていないのだろうか? もちろんターゲットの違うテレビではこういうところは修正されるのかもしれないが、時の流れが止まったような作品である。それに何より残念というか手抜きだと思われるのは下北サンデーズが精魂込めて演じる劇が小説の中には粗筋の一部しか書かれていないということである。これもテレビで補われるのだろうか? |