感想文番号

著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2006070003 齊藤寅 世田谷一家殺人事件 2006 日本 草思社

評者:発起人    評価:5   読了日:2006/07/09   公開日:2006/07/09

「ついに犯人を突きとめた!」−ほんとうか?

 2000年12月30日から31日にかけて発生した世田谷一家殺人事件。宮澤みきお(44)さん、妻・泰子(41)さん、長女・にいな(8)ちゃん、長男・礼(6)ちゃんの一家四人が何者かによって惨殺された事件である。

 はっきりとした指紋を含む多数の遺留品があったにもかかわらず、今だにこの事件は解決していない。事件発生直後はワイドショーなどでも取り上げられ、さまざまな説が流れたがすでに事件から5年以上も経過している。

 ところが、この本の帯には「ついに犯人を突きとめた!」と赤い字で印刷されている。むむっ?ほんとうか?と思わず買ったこの本、著者の齊藤寅(さいとう・しん)はフリーのジャーナリストで、週刊誌記者をしていたという。

 事件取材の経験が長いようで、その文体はまさに週刊誌的。最初に衝撃的な見出し、そして興味をあおって最後まで読ませる、しかし読み終わってみても結局それで「犯人」は今どこにいるのかということはよくわからないし、決定的な証拠も無い。(もちろんそんなものがあれば警察は犯人を逮捕あるいは指名手配しているはずであるが・・・)

 著者が注目したのは、毎年東アジアを中心に日本に留学や就労のために合法・非合法を問わず流入してきている外国人たちのつながりである。その中の一部が国籍を問わず、「クリミナル・グループ」(犯罪者集団)を結成し、世田谷の事件はその文脈で捉えるべきだというのである。

 もっとはっきり言えばそういうグループに属する(と思われる)二人を実行犯として(頭文字だけだが)名指ししている。(著者によると写真も入手している。)

 世田谷事件のあと大阪・曽根崎での風俗嬢殺し(2001年12月)、大分・山香町での強盗殺傷事件(2002年1月)、そして著者が直接取材していないせいか詳しく触れられていないが名古屋の女性風俗店店長誘拐・殺人事件(2002年12月)、福岡での一家四人殺害事件(2003年6月)などこのような集団に属すると思われる外国人による犯罪が続出しているというのである。

 かれらを結びつけるのはインターネットであり、動機は金であり、グループ内での地位を上げるためにあえて大きな事件を引き起こすのだという。

 著者の意図はどうあれ、中国や韓国などから日本に来ている外国人への不信感や差別意識を煽る結果になる本であることは確かである。

 著者は現職警察官や在日外国人のボス的存在(複数)との人脈を生かして取材をしているようだが、これら「貸し借り」に基づく取材は果たして信用できるのだろうかという疑問も残る。

 この本がきっかけとなって著者が特定する犯人逮捕に結びつくことになれば私も一読者としてこれに勝る喜びはない。


作家別一覧:  1 2 3 4 5 6 7 8

刊行年別一覧: 1 2 3 4 5 6 7 8

Home