感想文番号

著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2006060004 折原一 灰色の仮面 1990 日本 講談社文庫

評者:発起人    評価:7   読了日:2006/06/27   公開日:2006/06/27

白いマンションに住む独身女性を狙う連続殺人犯は誰か?

 「僕」、山岸陽介(26)は売れないフリーライターである。物書きとして成功しようという夢を持って上京してきたが、雑文を書いてなんとか生きている。汚い、冷房も風呂も無いアパートに住み、コインランドリーの帰りにレンタルビデオでAVを借りては欲望を発散させているようなさえない状態である。

 ところがある夜、白いマンションの側を通りかかったときに女の「死ぬ、死ぬ、やめて」「お願い、やめて!」という声を聞く。最初は女のエクスタシーの声かと思ったが、気になって引き返してみると、部屋は開いていて、中にはほとんど全裸の美女の死体があった。

 同居している女が戻ってきて大声で叫び、「僕」は思わず落ちていた「電子手帳」(懐かしいな)を持ったままかろうじて現場から離れる。

 殺されていた女は白いマンションに住む独身女性を襲い殺害する連続殺人事件の新たな被害者だった!しかし「僕」には無実を証明する方法は無い。真犯人が落としていったと思われる「電子手帳」には六人の女性の名前と住所が記録されていた。しかし、そのうちすでに五人は殺されていた!

 「僕」は六人目の女を捜し、犯人を捕まえて無実を晴らそうとする。同時に今までの体験を記録しておこうと、ワープロに打ち込みはじめる。

 ところが、ちょっと待て、この小説は、このワープロに記録されたものなのか?別の視点で文章を補足されている気配もある・・・。

 ここからは折原一(おりはら・いち、1951-)お得意の幾重にも張り巡らされた「叙述トリック」の世界である。読者が読んでいるのはいったい誰が書いているものなのか?次々と浮かんでくる容疑者。しかも「僕」がほんとうのことを書いているという保証ももちろん無い。しかも「僕」はいろいろな理由でときどき記憶が飛んでしまうのである。

 そして浮かび上がる解決とは?二転三転する真相とは?最後の一行まで気の抜けない傑作である。

 解説によると、私が読んだ講談社文庫版は1992年に出版された講談社ノベルス版を文庫化したものだが、1990年のオリジナルとは結末が変わっているという。たしかにこのタイプの小説では論理的に一貫していてかつ異なる解決を提示することが可能だ。私ならこう解決するという楽しみ方もできるだろう。


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