感想文番号

著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2006060002 渡辺淳一 愛の流刑地 2006 日本 幻冬舎

評者:発起人    評価:3   読了日:2006/06/14   公開日:2006/06/18

性と死の深淵を見つめた大作−ごわっ!

 愛し合う男女に外部が入り込む余地は無いのである。しかし複雑極まりないこの世に背を向け隠花植物のように絡み合っているだけでは生きてはいけないのも事実である。

 かつては人気作家として鳴らしたが今は週刊誌の編集や大学の講師などをして糊口をしのいでいる村尾菊治(55)は、彼のファンだという人妻・入江冬香(36)と出会う。

 物語は菊治の視点から、冬香との性愛の深まりと歓び、そしてその頂点における「事件」を描く。「事件」の後菊治は法による裁きを受けるが、彼のもとに冬香は幻の姿で現れてきてくれる。

 冬香は虚無的な菊治の理想像であり、何をしても許してくれて、落ち目の男に力と勇気を与えてくれ、女であり同時に母でもある。性的な面では精巧に出来たロボットのようでもある。

 性愛描写がこの上下二分冊にわかれた単行本の半分以上を占める。しかしそういう興味から読む読者は退屈するだろう。ほかにもっと上手な作家がいるからというわけではないこともないこともない・・・というかそもそも文章による表現は難しいのである。

 それではほかにどういう面白みがあるのか?「日本経済新聞」に連載中のとき日本のビジネスパーソンは毎朝この小説を読んで何を思っていたのか?

 単純に話題作りだったんだね。職場の潤滑剤。もちろんセクハラで訴えられない程度にね。

「部長、ハートマーク三つもつけてメールするのやめてくださいねっ!」

「してるかっ!生意気言うと「ごわっ」だぞ〜」

「すごおい」

などという会話がコミュニケーションが円滑な職場では繰り広げられていたに違いない。(あー、ちなみに私は日経は読んでませんので誤解無きよう。)

 しかし、単行本になり、映画化が決定(鶴橋康夫監督、豊川悦司・寺島しのぶ主演)され、テレビドラマも続く(日本テレビ系?)ということになると、それはそれで別のモノとして鑑賞されるということになるのだろう。

 さて、この渡辺淳一(わたなべ・じゅんいち、1933-)先生の大作、一行でまとめるとこういうことになる:

 ♡→♡♡♡→「すごおい」→「殺してぇ」→「ごわっ」→流刑地の爺  


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