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著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2006050008 網野善彦 日本中世の民衆像 1980 日本 岩波新書

評者:発起人    評価:7   読了日:2006/05/24   公開日:2006/05/25

単一民族・水稲耕作という常識を覆し多様な民衆像を提示

 

 歴史学者の網野善彦(あみの・よしひこ、1928-2004)が1980年に岩波新書の一冊として出した本で、日本人は大昔から単一民族でその生活は水稲耕作を基礎としてきたという常識に大きな揺さぶりをかけた。

 私・発起人でさえ、「網野史学」という言葉を知っているぐらい有名な人である。作家・隆慶一郎の作品にはこの「網野史学」の影響が見られるということも知っていた。

 ところが私の場合、日本歴史に関する常識がもともと無いため、「網野史学」の新しさや意味についてよく理解しているとは言えない。土地に縛られ、奴隷制の古代から封建制の中世・近世へという単線的な歴史観を漠然と抱いていたのである。

 しかしそれでは生き生きとした「民衆」の息吹や生活は伝わってこないし、いわゆる皇国史観や復古的歴史観を真に批判・克服することもできないという問題意識がこの歴史学者にはあったのだと思われる。

 著者が専門の日本中世史の実証的研究に基づき述べているのは多様な民衆の生活・生産・交易の姿である。とくに封建領主に縛られず、専門技術や米以外の生産物を提供する代わりに移動の自由を天皇を頂点とする権威に「保証」された人々・集団の姿である。さらに中世の東国に成立した鎌倉政権とその象徴である源頼朝の権威に同様の自由を保証された人々である。(ここでは東国と西国では違う「民族」が形成される可能性があったとまで述べられている。)

 従来の予想以上に交易・移動が盛んであり、海上・陸上を問わずまた日本列島内に限らず移動していた人々の姿は多くの読者の想像力をかきたてる斬新なものである。

 このような研究がその後どのような展開を遂げたのか私にはよくわからないし評価のしようもないが、著者による問題提起によって単に歴史学者の狭いサークル内を超えて影響を与えたことはたしかである。


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