感想文番号

著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2006050007 奥田英朗 町長選挙 2006 日本 文藝春秋

評者:発起人    評価:6   読了日:2006/05/21   公開日:2006/05/22

爆笑精神科医伊良部シリーズ第3弾!− パワー・ダウンか芸がすべったか?

 

 『イン・ザ・プール』(2002)『空中ブランコ』(2004)に続く爆笑精神科医・伊良部一郎(37)が活躍するシリーズで四編が収められている。

「オーナー」での患者、田辺満雄(78)、通称「ナベマン」は日本一の発行部数を誇る新聞社の会長であり、プロ野球中央リーグの「東京グレート・パワーズ」のオーナーでもある。暗闇が怖い、閉所が怖い、そしてカメラマンのフラッシュが怖い。伊良部の治療法は?

「アンポンマン」での安保貴明(32)、通称「アンポンマン」はIT企業・ライブファストの社長である。漢字ではなく、ひらがなが書けなくなるという症状が出てくる。ん?若年性アルツハイマー?

「カリスマ稼業」で登場する白木カオル(44)は女優で「東京歌劇団」出身。「自然体」でカリスマを演じ、女性層からも人気が高い。ところが甘いモノや高カロリー食品を食べると、即座にカロリー消費のためのエクササイズをしないではいられない。

 今までのこのシリーズとは異なり、現代日本に生きている人なら誰がモデルになっているのかすぐわかる人物が患者として登場する。これはしかしモデル本人が主演してドラマにでもなれば絶対面白いと思うが、そうでない小説の世界では質の悪いパロディにしか思えない。賞味期限もおそらく短い。

 伊良部はほとんどすることがなく、患者たちは勝手に気づいてひとりでに治っていくのである。

「・・・精神科医の仕事なんて、結局は患者の相手になることだけだからなあ」(p147)と伊良部も言っている。

 表題作の「町長選挙」は前記3作とは異なり、特定のモデルがある作品ではない。東京都に属する離島の千寿島町役場に派遣されている都職員の宮崎良平(24)は、島を二分する激しい選挙戦に巻き込まれ両陣営から旗幟鮮明にするよう迫られる。買収・供応・利益誘導は当たり前、死者が出なければ成功という激しい選挙選である。ここに短期で派遣されてきたのが伊良部とおなじみ看護婦(師)のマユミ。両陣営は伊良部を利用して選挙選を有利に進めようとするが・・・。

 総じて、今回の伊良部は爆笑精神科医というより、スベったお笑い芸人のようである。気楽に楽しめるがパワー・ダウンは否めない。次作に期待したい。


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