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著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2006050005 芹沢一也 狂気と犯罪 なぜ日本は世界一の精神病国家になったのか 1988 日本 講談社文庫

評者:発起人    評価:8   読了日:2006/05/15   公開日:2006/05/15

精神病院列島形成の思想と歴史を解明−精神医学の責任は?

 

 精神病の多くは原因は特定されず、対処療法が主要な治療法である。しかし私たちの観念の中ではこの病気は犯罪と分かちがたく結びついている。

 たとえば宅間守が引き起こした池田小事件(2001)。八人の児童を殺害、十五人を傷つけたこのショッキングな事件では、宅間が過去精神病院への入院歴があったことが大きくマスコミで取り上げられた。

「過去に犯罪歴のある危険な精神障害者が、社会を自由に歩き回っているのではないかと、人々は恐れはじめたのだ。」

「その結果、紆余曲折の末、「心神喪失者等医療観察法」が」成立。これは「要するに「再犯のおそれ」があると判断された者を社会から隔離するための法律である。」(p5)

 「現在、精神障害者がおかれている状況は、歴史的にかたちづくられたものであって、自明なものでは決してない。「狂気」と犯罪といった問題も、あるいは「狂気」と閉じ込めといった現実も、いずれも歴史が生み出したものにほかならない。本書のただひとつの目的は、このことを示すことにある。」(p12)という基本的立場から、著者の芹沢一也(せりざわ・かずや、1968-)は文明開化時、江戸時代、近代、戦後の「狂気」と犯罪との関係に関する思想、警察や司法と精神医学(者)との関係を画期となった事件や法律をとり上げて、私たちが陥りやすい狂気と犯罪を直結させる思想の形成をわかりやすく描き出す。

 また現実に世界でもっとも精神病院入院者数が多い国になってしまった仕組みも簡潔に描かれている。社会と法から精神病者を排除し、医学的な発展の道をも閉ざした収容所のような精神病院の「発展」。

 読んで驚かされるのは、根拠もなく犯罪と精神疾患を結びつけ、そのことによって権力や富にすりより力を得てきた主流精神医学界の犯罪性と堕落ぶりである。精神医学者が書いた著作でこのことに直接言及されているものが少ないような気がするのは私だけだろうか。著者が直接批判している箇所は少ないが、凶悪事件が起きたあとでコメントする精神医学者だの犯罪心理学者だのの暗い顔を私は思い出したのである。

 著者が言うように「狂気」の脱犯罪化こそが今問われている。 


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