|
感想文番号 |
著者 | 書名 | 刊行年 | 刊行国 | 出版社 |
| 2006040007 | 藤原正彦 | 国家の品格 | 2005 | 日本 | 新潮新書 |
評者:発起人 評価:4 読了日:2006/04/17 公開日:2006/04/17
|
こんな本が売れるているとはたしかに国家の品格が問われます
|
|
数学が本業の藤原正彦(ふじわら・まさひこ、1943-)が書いた日本論であり、ベストセラーの上位に長く位置している。 著者の主張は単純明確で、日本人を褒め称える内容のためきわめて耳に入りやすい。 すなわち、欧米流の近代的合理主義は破綻し人類の存続自体を危うくしている、それは論理だけでは限界があるということである。私たちが金科玉条のようにして唱える、自由も平等も民主主義もフィクションである。 それに対していささか崩れつつあるとはいえ、日本には美しい情緒と形がある。日本人は自然に対する繊細で独特の感受性−虫の音を聞き、桜を愛で、「もののあわれ」を感じる−を育んできた。 近代的合理主義による世界の破滅を救うのは、日本の武士道精神である。惻隠の情や卑怯な行動をとらないなどのモラルを復活させることが「対立」に基づく西欧合理主義から世界を救うのである等々。 好き勝手なことを書いて(というか講演記録をまとめて本にしたようであるが)、それが世の中に受け入れられることは著者にとってはたしかに楽しいことだとは思う。 しかし、最初から論理の限界を指摘した上で、すなわち反証自体を閉ざした上で、自分の体験や読んだ本から好き勝手に日本人を褒め称える言葉を選んで並べた程度の本がこれだけ売れているということ自体が、すでに回復不能のところまでこの国の品格が落ちているということだとしか私には思えなかったのである。 日本人であるという事実だけしか拠り所がない、という方々には快感を与える好著であるかもしれないが、やたらと外国人による日本賞賛を並べていること、ノーベル賞や(数学の)フィールズ賞受賞者が好きらしいことなど権威や欧米を意識しすぎなところも私には気になった。 |