感想文番号

著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2006040005 澁澤龍彦 エロスの解剖 1965 日本 河出文庫

評者:発起人    評価:7   読了日:2006/04/13   公開日:2006/04/15

エロスについての芸術・思想を簡便に幅広く紹介

 

 性は普通の人にとって考えるものではないだろう。しかし人間はほかのあらゆることについてと同様、性についても考えるのであり、科学するのであり、表現するのである。しかもそれが根源的な謎であり、驚異であるためにあらゆる表現者が思想家がこの謎に挑んできたのである。

 澁澤龍彦(しぶさわ・たつひこ、1928-1987)はサディズムにその名を残すサド侯爵の作品の紹介で知られるが、本書ではサドにはほとんど直接言及していない。しかし、ギリシア神話からフロイト、サルトル、シュールレアリスム、現代 性科学の世界まで著者の筆捌きは自由で軽妙である。テーマもあらゆる性の事象をカバーしているといっていい。

 しかし、エロスが繁殖・生殖のためにあるとする思想に対する著者の反発は一貫している。

「 性を生殖に奉仕させる思想、性の活動を生産的なものとして理解するブルジョア的思想の俗悪さに、わたしはつくづく厭気がさしている。それは俗悪であるばかりか、科学的にも正しいとはいえないであろう。

 性を生物学的な一つの遊び、一つの贅沢として理解する思想の、革命的な正しさと美しさとをもっと強調する必要があろう。」(p44)

 読者にとっては、あまり肩肘張らなくても、著者が提示してくれる古今東西の性に関する先人の記述や芸術作品の要約に驚き、楽しむことのできる作品になっている。


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