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著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2006010005 東野圭吾 容疑者Xの献身 2005 日本 文藝春秋

評者:発起人    評価:9   読了日:2006/01/21   公開日:2006/01/21

物理学者が数学者の殺人隠蔽工作に挑む!−祝!直木賞受賞

 

 ついに東野圭吾(ひがしの・けいご、1958-)はこの作品で第134回直木賞を受賞した。『秘密』(1998)、『白夜行』(1999)、『片想い』(2001)、『手紙』(2003)、『幻夜』(2004)と過去5度最終選考に残り、6度目の挑戦での受賞である。

 別に普通の読者としては直木賞を取っていようがいまいが関係無い。ミステリーとしての仕掛け(トリック)の素晴らしさ、そして報われない愛情の切なさがうまく融合して、この作品は強烈な印象を読者に残すに違いない。私の場合はそうであった。

 富樫慎二という男との不幸せな結婚生活を解消して八年、今ではホステスもやめて『べんてん亭』という弁当屋に勤めながら(最初の夫との)一人娘で中学生の美里と平穏に暮らしている花岡靖子だったが、ある日富樫がアパートに現れる。復縁を迫る富樫を靖子・美里は衝動的に殺してしまう。

 その部屋に『べんてん亭』の常連客で靖子たちの隣に住む目立たない高校数学教師・石神が現れる。石神は、靖子・美里の殺人を知っている、そしてすべて彼の指示通りに行動すれば警察の追及を逃れられると驚くべきことを言う。石神は靖子に密かに想いを寄せ、ストーカーのように盗聴していたのである。

 死体が発見され、刑事の草薙も捜査に加わる。死体の身元がからやがて靖子が容疑者のひとりとして浮かび上がる。しかし靖子には反証不能のアリバイがある。捜査は行き詰まる。草薙は同じ帝都大学出身の友人で、今でも大学にとどまり助教授をしている天才物理学者・湯川学に事件のことを相談する。

 湯川は石神のことを聞いてにわかに興味をそそられる。湯川は天才数学者・石神のことを学生時代から知っていたのだ。湯川と石神との息詰る頭脳戦が展開される。はたしてアリバイは崩れるのか。

 石神の構築した途方も無い鉄壁の靖子防衛策は湯川との対決によって綻びを見せ始める。しかし、石神は先の先まで読んでいた・・・。

 石神の靖子への愛情、しかしそれにほとんど気づかず工藤という別の男からの求愛にも悪い気のしない靖子の心理描写などは少々弱い気もするが、別にこれは恋愛小説ではないのである。恋愛を味付けに使ったミステリーなのである。

 今日(1月21日)の東京のように積雪で外出も面倒というような一日、こたつの上にミカンでも日本酒でも載せて、じっくり味わうのに最適の一冊である。連続ドラマにはちょっと無理かもしれないが、映画化は確実なのではないだろうか。(ちなみにこの作品、「このミス2006年版」国内編でもブッチギリの1位であった。) 


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