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感想文番号 |
著者 | 書名 | 刊行年 | 刊行国 | 出版社 |
| 2006010003 | 有吉佐和子 | 出雲の阿国 | 1969 | 日本 | 中公文庫 |
評者:発起人 評価:9 読了日:2006/01/15 公開日:2006/01/16
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歌舞伎を創始した伝説の女性を描いた大作−NHK金曜時代劇原作
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私・発起人がアクセスアップ対策として進めてきた2006新春ドラマ原作本プロジェクトの第6弾!有吉佐和子(ありよし・さわこ、1931-84)が1969年に完結した大作である。ドラマはすでに1月13日から菊川怜、堺雅人ほか出演で放送開始(NHK)されている。 出雲の斐伊川下流の杵築中村で育った阿国(お国)はこの川の上流の鑢(たたら)と呼ばれる製鉄業を生業とする集団の血を受け継いでいる。父母は鑢の世界で添い遂げることを許されず下流に逃げてきて阿国を生んだが、大洪水で死んでしまう。 阿国は美しい娘に成長し、世話になっていた三右衛門率いる出雲念仏踊り一座に加わり、大阪や京都で、そして時々の有力者のもとで踊りを披露する。 お国は天性の才能に加えて、自らが民衆の前で一体となって歌い踊るということに悦楽を覚えていく。過去の芸能や時々の流行を貪欲に取り入れ、早変わりや男装など新しい工夫・演出を次々と編み出し、やがては名実ともに「天下一」の阿国歌舞伎を創始する。 三右衛門たちが出雲に帰っても、阿国は帰らない。阿国一座を権力に取り入るために利用しようとするさまざまな庇護者たちの力もあったが、阿国は城を作っては壊す男たちのいわゆる政治を理解できない、いや拒否している。 鼓打ちで能楽の名門観世座を飛び出して阿国一座のリーダー格になったが阿国を「利用」できずに離れて行く三九郎、歌舞伎の語源となった傾き者の武士で阿国と熱烈な恋愛をする山三、常に阿国の芸術の理解者であったが結ばれることのなかった傳介、故郷で夫婦約束をしていたが捨てられたことを根に持ち阿国に陰湿な復讐を遂げようとする九蔵などさまざまな登場人物が阿国のまわりで躍動し、阿国もかれらに応えて変化していくのである。 作者は基本的な史実は踏まえながらも、信頼できる資料の少ない阿国に惚れ込み、自らの芸術観をも展開しているように見える。 ところが悲しいかな、私のように歌舞伎や能や浄瑠璃の区別もよくわからない古典芸能・文学の知識のない読者はこの作品を十分鑑賞することはできないのかもしれない。テレビでも見るか。 しかしそれにもかかわらず、小説作品として一級品であることは間違いない。最後は「天下一」や「阿国歌舞伎」を僭称する遊女歌舞伎(遊女屋の宣伝のために行われた模倣)に押されて、父母の故郷に辿り着く阿国が達した境地を描いた部分などは小説家としての作者の矜持が阿国を通じて感じられるのである。 ところで、この作品、ちょうど豊臣政権(天下さま)の最盛期から関が原の戦いを経て徳川政権へ権力が移っていった時代のことであり、山内一豊やその妻・千代(『功名が辻』参照)も阿国の踊りを見たかもしれない。そんなことはどちらの小説にも書かれていないが、同じNHKだしやってみたらおもしろいのでは?このアイデアは無償公開します。 |