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著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2006010002 チャールズ・ディケンズ オリバー・ツイスト 1839 イギリス 新潮文庫

評者:発起人    評価:8   読了日:2006/01/05   公開日:2006/01/05

十九世紀英国の大文豪が時代と読者に挑んだ傑作

 

 十九世紀英国の大文豪、チャールズ・ディケンズ(1812-1870)が1839年に完結した長編。

 主人公、オリバー・ツイストは救貧院で生を受けるが、名前もわからない母親はオリバーを産んですぐに亡くなる。十九世紀前半の英国は資本主義経済が浸透し、富が蓄積されるとともに膨大な貧困層を生み出し、後の社会福祉制度の萌芽のような制度があったようなのである。

 ところが現代日本でも福祉制度を食い物にする連中がいるように、当時の英国でも国から支給される福祉支出を食い物にする連中がいたのである。オリバーはマン夫人という女が「経営」する救貧院の分院に預けられる。マン夫人は「一週一人頭七ペンス半の割合で」オリバーのような子どもたちを引受けていた。ここではコストは最低限に切り詰められ、子どもたちは虐待され、「事故」のために多くの子どもたちはあの世に送られる。教区吏のバンブル氏と癒着し、救貧院による監督も実質的に免れていたのである。

 九歳になったオリバーは、最低の栄養で辛うじて生き延びていたが、ささいなことで懲罰的に「売り」に出される。結局「奉公」先として決まったのは葬儀屋のサワベリー氏のところであった。そこで知りあったノア・クレイポールという「慈善会」(よくわからないが国の制度では無い福祉施設?)出身の徒弟に母親を侮辱されて喧嘩、何のあてもなくロンドンへと逃げた。

 さて、ロンドン、世界の都であるロンドンは同時に貧窮とそれに伴う不衛生・堕落と犯罪の都でもあった。身寄りのないオリバーは子どもたちを使って窃盗を働く犯罪者、ユダヤ人・フェイギンの一味に入れられてしまうが・・・。

 とにかくオリバーがけなげで泣かせる(特に前半)。同時にロンドンに巣食う犯罪者集団の側の事情もリアルに描かれていてむしろ同情してしまうほどである。オリバーの出自は?オリバーをめぐる「争奪戦」の行方は?と読者を飽きさせないスリリングな展開も英語で書く作家が今でも手本にしていると言われているディケンズだけあって、素晴らしい。

 さて、現代日本では下流社会が形成されつつあるという。東京・足立区では公立小・中学校で公費補助を受ける子どもの割合が47%を越えているという。そんな例を持ち出すまでもなく、オリバー以下の状態にある子どもたちは今でも世界に何千万人と存在するのである。ディケンズは慈善や愛によって貧困と犯罪を減らそうとしたことが読み取れるが、さて私たちには何ができるのだろうか?などということもインフルエンザからくる関節痛とさむけに悩まされながら考えたのである。

 なお、2006年1月28日から、『戦場のピアニスト』のロマン・ポランスキー監督、バーニー・クラーク主演の映画が全国ロードショー公開される。


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