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著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2005110006 東野圭吾 白夜行 1999 日本 集英社文庫

評者:発起人    評価:9   読了日:2005/11/20   公開日:2005/11/20

松本清張を彷彿とさせる現代の悪と愛を描いた傑作

 

 東野圭吾(ひがしの・けいご、1958-)が1999年に発表した作品。2006年1月からTBS系で連続ドラマ化が決定している。(出演は、山田孝之、綾瀬はるか、渡部篤郎、八千草薫、武田鉄矢ほか。)

 冒頭、登場するのは大阪府警の笹垣潤三(ささがき・じゅんぞう)である。彼は非番で、「今日のために、松本清張の新作を読まないでいたのだ」(p5)。ところが建設途中で放棄された七階建ての廃ビルの中で遊んでいた子どもにより刺殺体が発見されたため、以前配属されていたこの西布施警察署管轄の現場へ急行したのである。

 ときは1973年10月、被害者は桐原洋介、質屋『きりはら』の主人で、妻の弥生子(かつてキタ新地でホステスをしていた)、一人息子の亮司(小5)と暮らしていた。従業員は松浦勇という中年男ひとり。犯行時刻は前日・金曜日の午後6時から8時ごろと推定されたが、桐原は百万円の預金を下ろし、質屋の客の一人、西本文代の家に立ち寄っていた。文代は一人娘の雪穂(小5)と二人暮しだった。

 捜査陣は西本文代をマークしたが、そのうち文代の働くうどん屋に通いつめているという男、寺崎忠夫が捜査線上に浮かび上がる。ところが寺崎は交通事故で死亡、車から桐原洋介の持っていたのと同じダンヒルのライターが発見された。しかし決定的な物証もなく、文代の証言も得られず、事件は迷宮入りとなった。しばらくして、文代が自宅でガス中毒死するが、事故死として決着する。

 この殺人事件の「容疑者」の娘・雪穂と被害者の息子・亮司とはその後対照的な人生を歩む。社会の階層を美貌と頭脳を武器に駆け上がっていく雪穂。裏社会でさまざまな「ビジネス」に手を染める亮司。そして二人の周りで不幸になっていく人たち。

 しかし、1992年のクリスマス・イブの印象的な幕切れまで二人は「共利共生」の関係にあったのだ。

 カード偽造、「スーパーマリオ」などのゲームの違法コピー、ネットワークに侵入するハッカーなど独立した話としても面白いネタが贅沢に詰め込まれていて、二人の人生と時代にリアリティを与える。また各挿話に登場する脇役的人物たちも立体感をもって読者の前に浮かび上がってくる。

 悪とは何か?二人は、いや同時代を生きた私たちに、他に取る道はあったのか?強烈な読後感を残す傑作であり、作者の現代ミステリーの最強作家の一人としての手腕を見せつけた作品でもある。

「わたしの上には太陽なんかなかった。いつも夜。でも暗くはなかった。太陽に代わるものがあったから。太陽ほど明るくはないけれど、わたしには十分だった。わたしはその光によって、夜を昼と思って生きていくことができたの。」(p826)という雪穂の珍しく心情を吐露したセリフがこの作品のタイトルを説明している。


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