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著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2005110003 コリン・ウィルソン 現代殺人の解剖 暗殺者の世界 1972 イギリス 河出文庫

評者:発起人    評価:6   読了日:2005/11/10   公開日:2005/11/12

哲学は難しすぎるでも猟奇殺人実話は下品すぎるという方に

 

  われわれは、いや私は新聞や雑誌で殺人事件の記事を読むのがかなり好きである。それが理解不能のものであるほど興味をそそられる。しかし、昔の週刊誌に載っていたような煽情的・猟奇趣味の描写だけでは飽きがくる。何よりもそんな低級な記事にうつつを抜かしているわけにはいかないのである。

 などと思う人にピッタリの作家・批評家がイギリスのコリン・ウィルソン(1931-)である。本書でも猟奇的なあるいは理解不能の殺人事件への興味を満たしつつ、著名な作家や哲学者からの引用で読者の猟奇趣味への後ろめたさを和らげてくれるのである。

 なるほどうんうんニーチェがそんなことを言っているか、ドストエフスキーの登場人物は現代の犯罪者たちを先取りしていたのか、フロイトは単純すぎる?マスロウの理論が不可解な殺人者たちに当てはまる?等々・・・。

 とにかくこの本が出版された1972年の時点では不可解な殺人、新しい型の殺人は増えていたのである。こうした殺人者たちを著者は暗殺者(assasin)と読んでいる。政治的暗殺者を連想しがちであるが、著者は暗殺を「殺人それ自体のために殺人を犯す」ことと定義している。

 有名なチャールズ・マンソン(オウム真理教との類似と相違などは興味深いテーマになるかもしれない)の例など殺人者たちが多数紹介されている。巻末には19世紀末のロンドンを震撼させた殺人者「切り裂きジャック」は誰だったかについて考察した附録までついている。

 このような「暗殺」=殺人それ自体を目的とした殺人がなぜ発生したのか。それが今(1972年の時点で)増加しつつあるように見えるのはなぜか。

 こうした犯罪の社会的・心理的背景を過去の事例や文学作品からの自由自在な引用・援用で解き明かし、独自の説明(理論)と脱却の方法を提示している。

「人間の理想主義的な情熱に捌け口を提供できない社会は、みずから進んで暴力に八つ裂きにされることを求めているのである。このことが理解されたあかつきには、無動機殺人の時代は終るであろう。」(p370)

 この本(原著)が出版されて30年以上経過して、答えは明らかなように思える。


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