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感想文番号 |
著者 | 書名 | 刊行年 | 刊行国 | 出版社 |
| 2005110001 | 三浦展 | 下流社会 新たな階層集団の出現 | 2005 | 日本 | 光文社新書 |
評者:発起人 評価:7 読了日:2005/11/1 公開日:2005/11/3
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「下流」の増大と社会の分裂・固定化をマーケティングの観点から分析
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昨年は『希望格差社会』(山田昌弘)という本が出た。今年は『下流社会』である。著者の三浦展(みうら・あつし、1958-)はマーケティング・アナリストとして活躍するいっぽうで、本書のような本も書いているという。さすがマーケティングの出だけあってネーミングがうまい。(題名の他、「かまやつ女」や「ジモティ」など。) 自分を「中」と感じる人たちがの割合が減少し、「下」が激増し、「上」もそれなりに増加している。そして「下」は「下」を拡大再生産し、「上」も「上」を継承し、「中」がやせ細る。(なお、ここで言う「上」、「中」、「下」はあくまでも本人の意識の問題であり、客観的な収入などの指標で分けているわけではない。) 社会学者ならそれは社会の不安定化につながるなどと言ってすましていられるのだろうがモノやサービスを売るための分析を本業にしている三浦展にとってはそれだけでは不十分なのである。 日本の高度成長期、すなわち「中」流意識が主流であった時期には企業のターゲットもこの圧倒的に人数が多く、トータルとして購買力のあった層をねらっていればよかった。しかし、今やこの減少しつつある層をねらうだけでは不十分である。「上」をねらう商品・サービスを開発しなければ売上・利益の拡大は望めない。また「下」はいったいどのような消費欲求を持っているのか分析しなければ比率として急増しているこの層には食い込めない。(この層を相手にせず、という経営判断もできない。) というわけで、著者はみずからの主宰する「カルチャースタディーズ研究所」が実施したアンケート調査などに基づき、「上」、「中」、「下」それぞれの消費を中心とする意識を分析した。 私が感心したポイントを数点あげると、(1)「下流」の最大の特徴は、「単に所得が低いということではない。コミュニケーション能力、生活能力、働く意欲、学ぶ意欲、消費意欲、つまり総じて人生への意欲が低いのである。」(p7)、(2)「自分らしさ」や「個性」を大切にすると考えるのは「団塊」世代を除けば「下」に顕著な傾向であり、「上」は社会の秩序や伝統に忠実な傾向が強い、(3)パソコンやインターネットを趣味にしていると答える人は男性では「下」ほど高い、(4)階層区分は収入だけではなく学歴・職業・居住地・配偶者の階層も固定化させている・・・などである。 著者は高度成長期に目指されすでに否定された「結果平等」に代わって提唱されている「機会平等」だけでは不十分であるとし、「機会悪平等」を提唱する。たとえば親の階層が低い子供には入試のときの合格点を下げるとか、東大の学費を無料にするとか思い切った施策を実行せよというのである。意欲が低く、「自分らしさ」を大切にし、「下」にとどまる親はそれはそれで自由であるが、その子供たちまでも「下」をそのまま受け継ぐという構造の固定化はやはりおかしいからである。 この部分は単に煽るだけ煽って何の政策的提言もなかった『希望格差社会』より上ではあるが、実現可能性ということになるとはなはだ心もとない。 かといって増大する「下」の圧力が政治変革につながるという可能性となるとさらに低い。この本によると「下」は自民党を支持し、フジテレビを見る割合が他より高いというのである。増大する下流階層が今回の選挙の小泉自民党圧勝の背景にあるのだろうか。 |