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著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2005100002 藤沢周平 たそがれ清兵衛 1988 日本 新潮文庫

評者:発起人    評価:8   読了日:2005/10/10   公開日:2005/10/11

奇人だが剣は強い−「使われる」下級武士の勝負を描く

 

 例によって私は未見であるが、山田洋次監督が映画化した(真田広之・宮沢りえ主演)ことでも知られる藤沢周平(ふじさわ・しゅうへい、1927-1997) の傑作短編集。

 表題作の「たそがれ清兵衛」をはじめ、「うらなり与右衛門」、「ごますり甚内」、「ど忘れ万六」、「だんまり弥助」、「かが泣き半平」、「日和見与次郎」、「祝い人(ほいと)助八」の八編が収められている。

 いずれも基本的にはこのような冴えないあだ名で呼ばれる下級武士が主人公である。その日常の勤務ぶりや生活はほぼ変人奇人の類にまで達している。

 たとえば清兵衛は病に臥せっている妻の介護のため疲れているため、昼間の勤務は居眠りまじりだが、勤務時間が終わるたそがれ時には元気を回復し、そそくさと下城する、つまりたそがれ時に元気になるというところからつけられたものである。

 近い同僚などは事情を知っているのでとやかく言わないのであるがいずれの登場人物も武士としてはいささか格好悪い事情におかれている。

 しかし、かれらは同時にすべてこれらの欠点を補って余りある剣の使い手なのである。しかも多くの場合藩はかれらと無縁のところで激しい政争や派閥争いの渦中にある。またどうしても剣を抜かなければならない状態に追い込まれる場合もある。

 日ごろは見せない剣の腕を彼らは必要となるワン・チャンスでしっかり示すのである。しかも多くの報奨を求めることもないのである。

 現代日本の企業では、この小説に出てくるような、日ごろは揶揄されているが、ここ一発というときに力を発揮するというような人物を抱えておく余裕のあるところは少ないであろう。「むっつり助平」などとあだ名されればこれは即セクハラだと騒がれて活躍の機会などは永久に与えられないに違いないのである?


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