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著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2005100001 ダン・シモンズ ハイペリオン 1989 アメリカ ハヤカワ文庫SF

評者:発起人    評価:8   読了日:2005/10/08   公開日:2005/10/09

すべてのSF、物語を包含しようとする壮大な試みの第一部

 

 米国の作家、ダン・シモンズ(1948-)が1989年に発表したこの大作『ハイペリオン』、私が読み終わるのにほぼ40日もかかったのは決して退屈な作品であるからではない。

 あまりSFというジャンルになじみのないタイプの読者である私がこの作品の元となった諸作品や設定を知らないことや、仕事が忙しかったためで、つまり読者である私のレベルの問題である。

 SFだけではない。作者はより広い文学の領野から多様な要素を借りて縦横無尽に駆使してこの壮大な物語を創り上げている。

 『ハイペリオン』とは何か?

 聖遷と呼ばれる人類の地球脱出後約800年が経過し、諸惑星の連合体である「連邦」が「テクノコア」と呼ばれるAI(人口頭脳)と独立しながら共存している。「転移システム」で結びついたこの「ワールド・ウェブ」はしかし、この連邦に加わらない外的世界とも接している。

 ハイペリオンはそうした惑星のひとつであり、「時間の墓標」と呼ばれる未解明の建造物があり、「抗エントロピー」場、つまり時間を逆転させる力を持っている。シュライクという正体不明の殺戮魔の集団に護られ、シュライク教団が存在するこの惑星はアウスターという宇宙の蛮族と連邦との戦いの戦線にもなろうとしている。

 この惑星へシュライク教団から巡礼として選ばれ、上陸を許可されたのは次の七名。(もちろんこの惑星には転移ドアが無いため宇宙船による旅である。)

 今や超少数派になってしまったカトリック教団のルナール・ホイト神父、連邦軍FORCEのフィドマーン・カッサード大佐、詩人のマーティーン・サイリーナス、ユダヤ系の学者ソル・ワイントラウブとその娘(といっても赤ん坊だが)のレイチェル、女探偵のブローン・レイミア、そして物語のはじめはただ「領事」として登場するマーリン・アスピック。

 それぞれが強烈な個性を持ち唯一無二の体験をしている。そして「時間の墓標」へ向かう旅の合間に自らの物語と巡礼の意図を語るという構成が取られている。この物語を読むことで読者にはこの世界が開かれていく仕掛けになっている。もちろん各編自体が独立して楽しめる小説でもある。

 ハイペリオンに向かう船の船長であったが、途中でいったん行方不明になってしまうヘット・マスティーン(彼の物語は語られない)を含め各自が抱える問題や課題は解かれることなく、一行が「時間の墓標」に到着する寸前でこの『ハイペリオン』は終わってしまうのである。

 作者はこの作品に続いて『ハイペリオンの没落』(1990)、『エンディミオン』(1996)、『エンディミオンの覚醒』(1997)を出版している!すべての謎が明らかになるにはさらに長い旅が必要であるらしいのである。

 脳と脳を直結する「シュレーン・リング」を使って、ちょうどブローン・レイミアが詩人のキーツのレプリカとやったように、残りの三作を私の脳に転送してもらうというわけにはいかないでしょうか?

 ああ、そんな「本の虫」にあるまじき暴言を吐くのは私・発起人の蓄積疲労のためで、ダン・シモンズの天才ぶりは、この第一作だけでも明らかである。

 ただ欠点を挙げるとすれば、平均的アメリカ人の他民族観や「未開民族」観がそのまま投影されていることや「ワールド・ウェブ」自体が現代米国の政治統治機構とあまりにも似ていることなどであるが、まあこれは米国市場を主ターゲットとしている作家としては仕方のないところか。


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