感想文番号

著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2005080010 志村史夫 こわくない物理学 −物質・宇宙・生命− 2002 日本 新潮文庫

評者:発起人    評価:4   読了日:2005/08/29   公開日:2005/08/29

コンペイトーから生命への道は遠かった −最後は「合掌」で終わる物理学の本

 

 いや、悪くはない。それどころか、私のような(数学ができないための)文系にも物理学の基本がイメージできるような平易な書き方で好感が持てる。各章の終わりにはまとめもついていて、誤解の余地なく物質・宇宙・生命とは何かについて、現在の科学が到達した水準の知識を与えてくれる。

 また何がわかっていないのか、それがなぜわからないのかということについても著者の応用物理学者・静岡理工科大学教授の志村史夫(しむら・ふみお、1948-)は明快な知識を与えてくれる。

 しかし著者の意図は、私が期待したこととは違って、物理学の入門書を書くということとは別のところにあったようだ。「本書は、この間、私が”自然”、具体的には物質、宇宙、生命について考えてきたことをまとめたもの」(p11)であり、どのようにして物質から生命が誕生したのかという問題意識に貫かれている。その著者の思考の理解を助ける範囲で物理学の基本、過去の学者・思想家が考えたこと、発見したことを記述しているのだ。

 古典物理学から量子論、相対性理論、そして生命へと記述は進むのだが、これはやはり相当な難題であって、著者も「物質から生命へ」を人間の科学で理解することの限界を自覚するのである。雪の結晶やコンペイトーのツノの生成をいくら研究しても、アインシュタインのE=mc2(二乗)という式をひねくりまわしても、ベルクソンの「生命の哲学」を読んでみても、このアポリアを解き明かすことはできないのである。

「はっきり言おう。

 私は「創造主」(「神」)の存在を信じたい。少なくとも、私にとっては、「創造主」(「神」)が存在すると仮定した方が、物質・宇宙・生命をより深く理解しやすい。もちろん、われわれは「神」が存在するか否かを証明できないので、その「議論」は哲学あるいは宗教の範疇に入る。」(p249)

 なるほど。そうですね。

 著者の写真を見ていると大学教授というよりなんだか僧侶のように見えてくるのであった。


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