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著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2005080009 藤沢周平 秘太刀馬の骨 1992 日本 文春文庫

評者:発起人    評価:8   読了日:2005/08/26   公開日:2005/08/27

強烈な派閥抗争の中で秘太刀「馬の骨」の遣い手を捜す

 

 続々と映像化される藤沢周平(ふじさわ・しゅうへい、1927-1997)作品。今日ご紹介する『秘太刀(ひだち)馬の骨』(1992)も2005年8月26日から6週シリーズでNHKでドラマ化、放送される。私にとっては昨年12月に読んだ『蝉しぐれ』(1988)以来の藤沢作品である。

 舞台は北国の小藩で当然江戸時代。

 近習頭取・浅沼半十郎(30代半ば)は筆頭家老・小出帯刀(こいで・たてわき、62)から呼び出され、馬の骨と呼ばれる秘太刀(ひだち)の遣い手を捜し出すため、小出の甥で江戸から戻ってきた石橋銀次郎という若者を手伝うよう命令される。

 この小藩では派閥争いが絶えない。六年前には、代々の名門で家老だった望月四郎右衛門隆安が暗殺され、望月家は失脚し、お家断絶の厳しい処分を受けた。望月家失脚のあと藩政の主導権を握ったのは杉原忠兵衛であったが、五年半政権を握ったのち、大病で小出に筆頭家老職を譲り渡した。

 望月四郎右衛門の死体を検分したひとり、大目付の笠松六左衛門が「ほう、『馬の骨』か」とつぶやいた。さらに、先先代の藩主播磨守親重一行が狂馬「沖風」に襲われた際、矢野惣蔵という藩士が「沖風」の首を両断したのだという。

 その矢野家は惣蔵、仁八郎のあと現在は藤蔵が当主である。銀次郎はまず藤蔵を手始めに、先代・仁八郎の高弟たち五人、内藤半左衛門、沖山茂兵衛、北爪平九郎、長坂権平、飯塚孫之丞に竹刀ではなく、木刀で勝負を挑もうとする。軽い気持ちではこの秘太刀は使われないだろうと考えたのだ。藤蔵らは申し合わせて挑発に乗らないようにするが、銀次郎は高弟たちの弱みを探り出し、相手を脅すようにして試合に引っ張り出す。

 この強引な銀次郎のやり方に反発を覚えながら、また長男を病気で亡くしてから精神に変調をきたしている妻の杉江を気遣いながら、半十郎はしだいに「馬の骨」の謎に引かれていく自分を見出すのである。

 さて、二人はこの秘太刀を見ることができるのか?誰がこの秘太刀を受け継いでいるのか?また小出の真の狙いとは何か?小出派、杉原派の暗闘の決着は?

 迫力ある試合、季節の遷り変わり、政争とは無縁のはずなのに巻き込まれていく(中間管理職的)武士の心情などの描写はさすがである。

 8月26日放送分を見た限りではかなり派手目な、ときにコミカルな演出が目立ったドラマのほうはさておき、小説の楽しさが詰め込まれた佳品である。


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