|
感想文番号 |
著者 | 書名 | 刊行年 | 刊行国 | 出版社 |
| 2005080004 | ネルソン・デミル | 王者のゲーム | 2000 | アメリカ | 講談社文庫 |
評者:発起人 評価:4 読了日:2005/08/13 公開日:2005/08/14
|
もっとぜい肉落とせ!−獅子の名を持つテロリストを追う捜査官
|
|
ニューヨークのジョン・F・ケネディ国際空港に着陸予定のパリ発トランスコンチネンタル航空175便からの無線連絡が途絶えた。機はしかしそのまま厳戒態勢がしかれた空港に着陸する。 175便にはパリの米国大使館に出頭してきたリビアのテロリスト、アサド・ハリールが護送されているはずだった。FBIやニューヨーク市警等の法執行機関で構成されているATTF(統合テロリスト対策特別機動隊)の契約捜査官、元ニューヨーク市警の「わたし」(ジョン・コーリー)はハリールを出迎えるために空港に赴いていた。異常事態を察知してFBI捜査官のケイト・メイフィールドとともに機に乗り込んだが、発見したのは乗員・乗客三百人の遺体だった。しかもハリールは見当たらず、護送の任に当たっていた捜査官も殺されていた。 ハリールは野に放たれたのだ。血讐を誓い、厳しい訓練を積み重ねてきたこの獅子(ライオン)を意味する名(アサド)の男は次に何をしようとしているのか。 「わたし」がセクハラ、人種差別的発言満載のジョークを連発しながら、チームワークをまったく無視してケイトとこのテロリストを追う章とこのテロリストの行動と心情を描いた章がほぼ交互に配されている。 米国のベストセラー作家、ネルソン・デミル(1943-)によるこの『王者のゲーム』(2000)、原題は"THE LION'S GAME"であり、王様ゲームを主題にしているわけではなく、所沢にある野球チームの話でもない。 しかしながら、それ以外のすべてを描いているといっていいほど、長い!長いだけならまだしも、ぜい肉でブヨブヨである。取材したことすべて、思いついたことすべてを詰め込んでいるという感じである。 しかも最後まで盛り上がりきれずに、さらに続編があるぞと匂わせて終わってしまう。このハリールとの対決のさなか、「わたし」は今の恋人(前作で恋人になったようである)とスッパリ別れ、異常に積極的なケイトと結婚するなどというサイド・ストーリーもある。 この作品が出版され米国でベストセラーになった2000年にはまだ小泉政権は誕生していなかったが、そのせいでもないだろうが、登場する日本人はロサンジェルスの高級ブランド店が集中するロデオ・ドライブを歩いている「・・・やたらにスナップ写真を撮ったりビデオ撮影に熱中したりしている日本人の団体観光客だけ」である。 「わたし」はケイトに言う: 「あの連中は、おれたちを映画スターだと勘ちがいしてるんだろうな」 「ずいぶん口がお上手ね。あなたこそスターよ。あなたはわたしのスターなの」とケイトは答えるのである! ことほど左様に、典型的アメリカ人が納得するであろう典型的な民族的・職業的なタイプに忠実な登場人物たちでこの小説はあふれている。リビア人はリビア人らしく復讐に凝り固まっているが同時にホテルのテレビに映し出されるポルノを見て思わず時間を忘れて見入ってしまったりもするのである。元KGBのロシア人でハリールを訓練した一人、ボリスはかつてCIAなどと華やかにやりあった記憶が忘れられず、当然ウォッカ漬けである。 同じアメリカ人でもFBI捜査官、CIAエージェント、シークレット・サーヴィス、市警の刑事、広報官等々もそういうステロタイプから一歩もはずれない。 また、この小説を読むと、2001年の米国同時多発テロ以前から、米国と中東「テロリスト」は激しい戦いを繰り広げてきたことがよくわかる。 1986年4月15日のリビア空爆作戦(これは事実)に参加した登場人物のひとりチップ・ウィギンズは言う: 「あいつら、報復をしてくるつもりなんだろうか・・・・・。いや、つまり・・・・・・やつらにやられて、おれたちがやりかえす。で、またやつらがやりかえして、おれたちがまたやりかえす・・・・・・これじゃ、いつになっても決着がつかないんじゃないのか?」 この懸念はたしかに的中した。 |