感想文番号

著者 書名 刊行年 刊行国 出版社
2005060010 西村寿行 異常者 1985 日本 講談社文庫

評者:発起人    評価:2   読了日:2005/06/30   公開日:2005/06/30

現代に続く停滞の時代を準備した(言い過ぎか?)西村寿行の「ハード・ロマン」

 

 いわゆる「ハード・ロマン」とか名づけられた、はっきり言えばエロ小説で一世を風靡した、西村寿行(にしむら・じゅこう、1930-)が1985年に発表した作品。

 この人の小説もだんだん本屋さんで見かけることが減ってきたが、思えば80年代、立派なサラリーマンたちがポケットに忍ばせていたのが西村寿行であった!「これ読んだからやるよ! こんな本家に持って帰れないからな」などとと飲み会の帰りにいやな上司に無理矢理渡されてはじめて読んだのが西村寿行であった!西村寿行は日本の「失われた10年」を準備したのである? 

 さて私は月に10冊分の本の感想文を公開することを一応のルールとしているため、本日2005年6月最後の日、せっぱつまってこの本を一気読みしてご紹介する。

 この作家の場合は監禁・陵辱系(!)が多い。本編も東京地方検察庁刑事部検事・桜井忠道(31)の妻・有紀子(あきこ、29)が何者かによって略取される事件で始まる。犯人は苑田竜夫(そのだ・たつお)という「異常者」で美しい有紀子を自分の妻であったのに桜井に誘拐されたと思い込んでいる。そして、 監禁の上、ああ、ここでは書けないような陵辱の限りを尽くすのであった!

 この事件を追う警察などとは別に、千年道士(せんねん・どうし)という元警視庁刑事で今は調査事務所を開いている男が桜井から依頼を受けてこの事件を追う。実は千年も約六年前に妻に謎の失踪を遂げられていた。(あれっ?結局読み終わってもこの千年の妻の事件は解決していないような気がするが・・・。)

 千年は事件を追うが、これを追う過程で苑田−有紀子と同様の事件が同様の描写で繰り返される。

 ところがそのうち話は「コリアン・コネクション」と呼ばれる日韓の覚醒剤密輸ルートとその運び屋たちに褒美のように与えられる女たちを香港で売り飛ばす人売組織=「X機関」を叩き潰すための千年たちの 闘いに移っていく。囮捜査を買って出た妙玄美弥(みょうげん・みや、28)など新しい登場人物も活躍する。舞台も鹿児島、阿蘇山麓からやがて返還前の香港へと移動する。

 さて、いったいこれはどういう小説なのか?「異常者」が野放しになっている、被害者の人権はどうなるみたいなことが書かれているいっぽうで、その「異常者」が「被害者」をいたぶるところが延々と描かれる。そして「被害者」のほうもだんだんと、あー、快楽の渦にのみこまれていくのである!

 それを読んでいる読者はどうなのか?こういう小説で隠れた欲望を発散させているからいいではないかということなのか。それ以上にそんなことをブツブツ考えながら感想文を載せている私はいったい何なのかと内省するのである。


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